小惑星衝突の脅威は「核兵器」で軽減できる? 「第2の月」出現中のいま知りたい「地球防衛研究」の最前線
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月9日 17時50分
地球近傍天体のうち、衝突リスクがゼロではないと計算されたものは危険度リストにまとめられています。10月9日現在、その数は1671個です。もっとも「地球に衝突する確率」と「衝突した場合の予測被害状況」から危険度を0から10までに分類した「トリノスケール」では、今のところ1671個すべてが「危険性なし(0)」です。
とは言っても、2013年にはロシア・チェリャビンスク州付近に隕石が落下し、割れたガラスなどで約1500人が負傷しました。この隕石は、地球大気圏に突入する前は直径約17メートルの小惑星でした。数百メートル、数キロの大きさの小惑星衝突の脅威は、計り知れません。
地球を救うために衝突前に小惑星の軌道を変更する方法には、宇宙船をぶつける、小惑星にロケットエンジンを取り付ける、爆薬や核兵器で破壊する、などが考えられています。NASAは2022年、DART(Double Asteroid Redirection Test) ミッションで、宇宙船を小惑星ディディモスの衛星ディモルフォス(直径170メートル)にぶつけ、公転周期を変えることに成功しました。
けれど、宇宙船をぶつける方法には、十分な開発期間と巨大な費用が必要です。小惑星が大型になれば、宇宙船も大きくしなければ効果は期待できません。
そこで、より大型の小惑星対策として、核兵器の利用が注目されています。利用方法には、①爆発によって小惑星を破壊し、落下しても地球大気圏で燃え尽きる程度に細かく砕く、②核爆発で放出される高エネルギーX線で小惑星表面の物質を蒸発させ、そのガスの急速膨張をロケットの推力のように使って小惑星の方向を変える、の2つが考案されています。
ただし、「核爆発の衝撃波は、小惑星の集積が密でない場合は吸収されるだけで、粉々にしたり、方向を変えたりする効果は薄い」という説も有力です。もっとも、これまでに実際の宇宙空間で試した人はいないので、はっきりしたことは分かっていません。
小惑星の表面近くで核爆発が起こった状況を実験で再現
今回、研究チームは、サンディア研究所にある世界最強クラスのX線パルス発生装置「Zマシン」を使って、「小惑星の一部蒸発による進路変更」の模擬実験を行いました。この装置は、アルゴンを数百万℃に熱してプラズマ状態にし、強力なX線パルスを発生させることができます。
太陽系内の成分の異なる小惑星に見立てた、コーヒー豆くらいの大きさ(約12ミリ)の2種の小石(石英と非晶質シリカ)を真空容器内に金属薄片で吊るし、X線を6.6ナノ秒間、照射しました。
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