米空前の住宅バブルは与党候補ハリスに有利に働く?──研究論文
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月10日 10時13分
「有権者は住宅価格の上昇、つまり住宅資産の価値に好意的に反応し、現職の候補と政党のおかげだと考える傾向がある」とティドウェルは続ける。「再選を目指す現職候補と政党は共に恩恵を得るが、その効果は現職候補のほうがより顕著だ」
ハリスは現職候補ではないが、4年間、副大統領を務めてきたという事実が、少なくとも住宅所有者に関してはトランプより優位になる可能性が高い。
不動産仲介大手レッドフィンによると、今年7月のアメリカの住宅販売価格の中央値は43万8837ドルで、前年同月は42万2000ドル、バイデンが大統領に就任した21年1月は33万1000ドルだった。ティドウェルらの研究によると、大統領選前の1年の間に住宅価格が上昇した場合、価格と投票行動の関係がより顕著に見られた。
そして、ここ1年の間に、大統領選で激戦が予想される7州で住宅価格が急騰している。レッドフィンによると、今年7月にアリゾナ州で前年同月比2.1%、ジョージア州で3.3%、ミシガン州で6.4%、ネバダ州で6%、ノースカロライナ州で2.2%、ペンシルベニア州で5.3%、ウィスコンシン州で8.6%上昇している。
有権者の大半を占める住宅所有者は住宅価格の上昇を喜んでいるだろうが、購入希望者や賃借人(賃貸物件の借り主)の思いは大きく異なるかもしれない。
「賃借人、特に購入希望者でもある賃借人は、購入能力を考えたときに投票傾向が変わる可能性もある」とティドウェルは言う。「購入できるかどうかや、手頃な価格の住宅が不足していることは、特に賃借人や初めて住宅を購入しようとしている人々にとって、今年の選挙で重要な影響を与えるだろう」
不動産会社ジロウが5月に発表した分析によると、アメリカの大半の主要都市圏では、ここ4年間で不動産の賃料が賃金の1.5倍の速さで上昇している。全国レベルでは2019~2023年に賃料は30.4%上昇したが、収入の伸びは20.2%だった。ジロウの最新データによると、賃料(間取りや構造に関係なく全ての物件)の中央値は2100ドルで、昨年から変わっていない。
ハリスは住宅不足に対処して住宅価格を引き下げることを公約に掲げており、4年間で300万戸の新築住宅を建設すると述べている。また、初めての購入者向けの住宅を建設する業者を対象とする税額控除を新たに設け、住宅建設を奨励する基金を2倍の400億ドルに拡大し、新規の建設を鈍らせている規制を撤廃するよう地方自治体に働きかけることも、経済政策案に盛り込んでいる。
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