エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月11日 10時50分
このとき考古学者らは、エジプト第18王朝(前1550~前1292年頃)の建築家だったセネンムト(センムト)の墓を発掘していた。第18王朝は古代エジプトが隆盛を極めた新王国時代の最初の王朝。セネンムトは女性ファラオのハトシェプスト(在位・前1479~前1458年)に家令として仕え、彼女の愛人だったという説もある。
My discovery of the 'Screaming Woman Mummy' is published in the print edition of Newsweek on August 30th, 2024.https://t.co/GXtzSJrvZr pic.twitter.com/El52wXesWo— Sahar Saleem (@Saharsaleem1) August 23, 2024
「叫ぶ女」はセネンムトの墓(写真)の発掘中に見つかった MONIKAKL/SHUTTERSTOCK
考古学者らはセネンムトの墓の下に、彼の母や親族のために造られた別の埋葬室を発見した。これらの埋葬者に交じって、黒いかつらをかぶり、古代エジプトで再生の象徴だったスカラベ(コガネムシ)の形をした指輪を2つはめた「叫ぶ女」が木製のひつぎに納められていた。
発見後、女性のミイラはカイロ大学カスル・アル・アイニ医学部に移された。ここでは1920~30年代に、ツタンカーメンを含む多くの王族のミイラが研究されている。98年にはエジプト観光・考古省の要請により、カイロのエジプト博物館に移された。
悲鳴とともに死んだ?
サリームはこのミイラのスキャン画像から、生存時の身長は154センチ程度で、骨盤の形から48歳前後で死亡したと推定している。
確実な死因は判明しなかったが、健康状態について分かったことがある。例えば背骨の椎骨(ついこつ)に骨棘(こっきょく)が見られるため、軽い関節炎を患っていた可能性がある。発見時に歯が数本なかったが、「生前に抜歯された可能性がある」と、サリームは言う。初歩的な歯科治療は古代エジプトで生まれたと考えられているという。
一方、かつらを調べたところ、ナツメヤシの繊維で作られ、曹長石、磁鉄鉱、石英の結晶で処理されていることが分かった。さらに皮膚の化学分析から、芳香性の樹脂である乳香とジュニパーの精油を使って防腐処理されていたことも判明した。どれも当時は、東アフリカや東地中海、南アラビアなどからの高価な輸入品だったはずだ。
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