【私らしく書く】「自分のこと」を書きたいが...人気エッセイストの「ネタ切れ」しないための習慣
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月31日 16時50分
訓練でネタと文字数がわかるようになる
この記録も、長年やっているうちに、ずいぶん楽になってきました。楽になったというのは、集めた情報から一本のエッセイを書き上げるのがうまくなったということです。前なら広げられなかったような広がりを文章に持たせることが容易になったのです。
それはつまり、書いた情報からピックアップできるものの割合が増えたということにもなります。掘り下げられるかをキャッチする視点が鋭くなったのでしょう。
エッセイにはその都度、依頼される文字数があります。たとえば、4000字と指示が出たら、4000字になりそうな情報を拾って、広げるのです。そんな作業がこの数年で上手になったと思います。この情報なら1800字くらいになるなとか、これなら2000字くらいかなとか、文字数によってイメージすることができるようになったのです。
これができるようになると、どんな文字数で指定されても、書けるようになります。昔はとてもできませんでした。
最初のエッセイの仕事は新潮社の「村井さんちの生活」でした。連載がはじまった頃は、2000字を書くのに2日くらいかかっていました。だって、2000字で完結するひとつの文章なんて、書いたことなかったですから。
いわば、それまで15秒のテレビCMをつくっていた人が、いきなり映画をつくるような話です。尺がまるでわからないのです。
2000字なら、いまは比較的すぐに書いてしまいます。とても速くなったし、2000字におさまる話の展開の仕方が身についたのだと思います。これは才能ではないです。完全に、繰り返し書いた鍛錬の賜物です。訓練あるのみだと思っています。
エッセイでユーモアを書く
どんなエッセイを書くか、蓄積した日々の情報のなかから選ぶときの基準のひとつはユーモアです。どんな悲惨な話のなかにも、おもしろいことが必ずひとつくらいはあるものです。「葬式の笑い」みたいなものです。そういうものを見つけられるネタを選んでいます。
やっぱり、おもしろい話が得意だし好きだから、私にとっては書きやすいのです。私は常におもしろい話を探しているような子どもでしたし、大人になってもそれは変わりませんでした。
後付けでおもしろく書いているのではなく、目の前で起きているときからすでにおもしろいなあと思って見ています。だって、おもしろいことって楽じゃないでしょうか? 深刻なことを考えているより、おもしろいほうが楽だと思います。
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