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【私らしく書く】「何か書いてみよう」と思うあなたへ...人気エッセイストが伝える書くことの救い

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月1日 16時50分

書けば現実に魔法がかかる/Alexas_Fotos-pixabay

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<エッセイを書くにはプロである必要はない。エッセイストに必要なのは小さなことを丁寧に味わう力>

ブログやnoteを活用して文章で自己表現する人が増えている。しかし、苦労してまで文章を書く理由はなんだろうか?

『兄の終い』(CCCメディアハウス)や『義父母の介護』(新潮社)他、エッセイ作品が人気の村井理子氏は、『エヴリシング・ワークス・アウト 訳して、書いて、楽しんで』(CCCメディアハウス)で、書くことは自分を救うことだという。

◇ ◇ ◇

書くことは現実に魔法をかけること

エッセイの仕事に関しては、私は本当にラッキーだと思っています。最近、私は義父母の介護をしています。

多くの読者が、村井さんが気の毒だ、かわいそうと言ってくださいます。ありがたいことです。一方で私は、これも書こう、こっちも書こう......という、書きたい気持ちでいっぱいなのです。

大変は大変なんです。でも書くことによって、自分のなかで完全にプラスに変わっているのです。

介護はリアルに悲惨な経験も多いです。でも、「これ、書いちゃお」って思った瞬間に、現実に魔法がかかります。ちょっとワクワクします。

悲惨な事件も思い切って書くと決めた瞬間、そこにユーモアがあちらからやってきてくれるのです。ちょっとしたおもしろさを拾っていってはじめて、こんな状況でも元気で生きていけるのです。

書くことに集中すると悲しさを忘れる

書くという作業は、ほんの小さなおもしろさに全神経を傾けて、観察して、ブーストして出力することです。誇張するという意味ではなく、おもしろさが際立つような目線を持つという意味です。

たったひとつのおもしろさを表現するために、その前後には、何が起きたのかを説明する文章がつくわけです。その、わずかなおもしろさの前後左右に、文章をくっつけることでエッセイが成り立ちます。

そうやって書いているうちに、おもしろいことの前後左右に存在する悲惨なことがらがどうでも良くなってくるんです。そう、文章を書いていると、楽しくなってくるのです。自分が潤ってくるんです。

人のためには書いていないのかもしれませんね。自分の現実をなんとかいい方向にねじ曲げるために、自分にいいように解釈して、仕事に結びつけている。

介護を無償の仕事と考えると、状況は違ってきます。家族の介護が悲惨に思えてしまうのは、無償の仕事だという考えが根強くあるからだと思います。私はその無償というところから、なんとか捻り出そうとしています。わかりやすく言えば、本を書くことで介護という行いに賃金を与えているのです。書いていることで自分が救われていると思います。

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