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【私らしく書く】「何か書いてみよう」と思うあなたへ...人気エッセイストが伝える書くことの救い

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月1日 16時50分

何でも書いているわけではない

エッセイは身の回りに起きた出来事をさらりと書けばよいので楽なのではないか......そう聞かれることが多すぎて、最近は「そうです」と答える機会が増えましたが、何かを書くことが楽なわけがありません。

エッセイは、身の回りで起きたことを題材にして書くのは間違いではありませんが、どこまで書くのか、誰について書くのか、何が真実なのかのさじ加減がとても難しいものです。大事なのは、「いかに多くの情報を開示せずに、多く書くか」という点です。

それはどうしたらいいのでしょうか。私は、「解像度を上げる」ことが重要だと思っています。本当にわずかな物事であっても、解像度を上げて見つめることによって、様々な側面が見えてきます。

どんな気持ちになったのか、その時、周囲には誰がいたのか、どんな天気だったのか......そういった細かな情報を丁寧に書いていき、そして全体をまとめていくと、些細なできごとにもちゃんとドラマがあるということがわかります。それがエッセイなのではないかと私は考えています。

誰の人生もおもしろい

よく、「村井さんの人生はアップダウンが激しいですね」と言われます。それは違うと思います。私の人生にアップダウンがあるように見えるのは、私が解像度を上げて、物事を間近から見つめて、それを事細かに書いているからです。

誰の人生にも、楽しいこと、苦しいことはあります。どんな人でもそれぞれの悩みを抱えて生きています。私はそれをひとつひとつ取り上げて、そして書いているから、読者のみなさんに届きやすくなっているだけのことなのです。

エッセイを書くために、プロになる必要はありません。エッセイを書きたいなと思われたなら、小さなことからでいいので、気がついたことを、自分の心に残ったことをメモ代わりに書いてみてください。それがいつの日か日記となり、自分の、自分のためだけのエッセイに変わっていくはずです。

◇ ◇ ◇

村井理子(むらい・りこ)

翻訳家/エッセイスト 1970年静岡県生まれ。滋賀県在住。ブッシュ大統領の追っかけブログが評判を呼び、翻訳家になる。現在はエッセイストとしても活躍。

著書に『兄の終い』 『全員悪人』 『いらねえけどありがとう』(CCCメディアハウス)、『家族』『はやく一人になりたい!』(亜紀書房)、『義父母の介護』『村井さんちの生活』(新潮社)、『ある翻訳家の取り憑かれた日常』(大和書房)、『実母と義母』(集英社)、『ブッシュ妄言録』(二見文庫)、他。訳書に『ゼロからトースターを作ってみた結果』『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(新潮文庫)、『黄金州の殺人鬼』『ラストコールの殺人鬼』(亜紀書房)、『エデュケーション』(早川書房)、『射精責任』(太田出版)、『未解決殺人クラブ』(大和書房)他。

『エブリシング・ワークス・アウト 訳して、書いて、楽しんで』
 村井理子[著]
 CCCメディアハウス[刊]

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