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裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調査でここまで「謎」が解けた

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月16日 18時20分

2020年に発見されるまでプロビデンツ号は300年も海中に眠っていた ERLING TØNNESSEN

アリストス・ジョージャウ(科学担当)
<18世紀にノルウェーの海で沈没した、アイルランドの貨物船プロビデンツ号。遺物や船体、木材の調査から「誰のミスで沈没した可能性が高いか」まで明らかに!>

300年前の沈没船を取り巻く謎に、いま新しい光が当てられようとしている。始まりは2020年12月、ノルウェー南部の町マンダル近くの海でプロビデンツ号という船が沈んでいるのが見つかったことだった。

アイルランドの商船であるプロビデンツ号は1721年9月22日、ノルウェーのアーレンダールを目指し、アイルランド南西部の都市コークの港を出航した。コークの有力な一族であるラビット家が所有していた船で、バター、トウモロコシ、小麦、麦芽などを満載していたと、考古学者のセーラ・フォーシットは説明している。

10月16日、プロビデンツ号はマンダルの近くで一時停泊し、しばらく天候の回復を待つことになった。数週間後、出航が決まり、沖に出るための針路を案内する地元の水先案内人が船に乗り込んできた。

ところが11月9日の早朝、天候はよく、月明かりがたっぷり注いでいたにもかかわらず、プロビデンツ号は海底の岩礁にぶつかり、船体の左舷に穴が開いてしまった。乗組員たちは無事に脱出できたが、船はあっという間に沈没した。

その後ほどなく、沈没の原因を解明するために裁判が行われた。水先案内人は裁判所に出廷せず、代わりに書簡を提出し、航海士を含む乗組員の一部が酒に酔っていて、正しく船を操舵できなかったのだと主張した。

見つかった場所はノルウェーのマンダル近くの海 ERLING TØNNESSEN

一方、乗組員たちは水先案内人の責任を指摘した。その人物が右舷と左舷を勘違いして誤った針路を指示するという重大なミスを犯したために、船が沈没するに至ったというのである。

今年行われたプロビデンツ号の調査に参加したノルウェー海洋博物館の海洋考古学者ヨルゲン・ヨハンネセンが本誌に語ったところによれば、一部の乗組員が酒に酔っていたことは十分にあり得るが、沈没の最大の原因は水先案内人の指示ミスである可能性が高いという。

西欧の交易ネットワーク

プロビデンツ号はこれまで300年の間、海の中で行方不明になったままだった。マンダルのダイビングクラブのメンバーが沈没船の残骸を発見したのは、2020年12月のことだ。「地元のダイバーたちは40年以上、(プロビデンツ号の)残骸を探していた」と、ヨハンネセンは言う。

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