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選挙干渉、フェイクニュース...「デジタル技術は民主主義に合わない」を再考する

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月28日 11時0分

民主主義国家が軒並み国内の分断に直面し、様々な社会課題を解決できないなか、デジタル技術を活用してそれを乗り切った(かのように見える)独裁者は自信を深め、世界にその統治手法の正統性を発信しているのである。

デジタル権威主義は万能か?

こうして見てみると、権威主義に比してインターネット空間の言論を制御できない民主主義は、デジタル技術との相性が悪いように思われる。

その隙間を狙って仕掛けられる外部からのサイバー攻撃や影響力工作にも脆いことから、デジタル技術革新が進む現代は、権威主義の独裁者にバラ色の未来を提示しているようにさえ見える。

しかし、デジタル権威主義も万能ではない。どれほど大きな権力を持つ独裁者であってもその統治が及ぶ範囲はあくまで国内に限られる。そのため、国境なきデジタルネットワークの広がりは権威主義国家にとってもリスクであるはずだ。

そこで、「デジタル技術は権威主義に利する」とする昨今の「デジタル権威主義論」を再考するため、筆者らは研究会を重ね、『デジタル権威主義――技術が変える独裁の"かたち"』(芙蓉書房出版、2024年)を出版した。

諸刃の剣としてのデジタル技術

デジタル技術革新により、中国やロシアといった権威主義国家も民主主義的価値の流入や、反体制運動の広がりを恐れている。しかし、そのようなリスクを独裁者が完全に防ぎきることは困難である。

事実、デジタル監視の網目を縫って運動が結実し、独裁者の意思決定に影響を与えたこともある。さらに昨今では、暗号通貨を使った国際的な支援も可能となっている。こうした変化はリソース面で不利な反体制勢力に力を与える可能性を示唆している。

また、デジタル抑圧を高め、インターネット空間を閉鎖することは、独裁者にとっても自らの正統性を発信するツールを制限してしまうことを意味する。

例えば、ウガンダではソーシャルメディアを利用して独裁者が自らの正しさを発信している一方、それを利用して反体制派が政権批判を繰り広げている。これに対し政権は取り締まりを強化しているが、国外に逃れた者による声を完全に遮断することはできていない。

加えて、法定通貨に仮想通貨を設定したエルサルバドルは、仮想通貨交換プラットフォームの破産によって経済危機に直面した。また、デジタル技術を駆使した権威主義の強化が、米国からの信頼低下を招くという国際関係の状況悪化にもつながっている。

すなわち、デジタル技術が権威主義に資するとは必ずしも言い切れないのである。むしろデジタル技術は独裁者にとって諸刃の剣なのだ。

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