中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布される5つの言説
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月30日 20時12分
私は専門家ではないので、どちらなのかはわからないが、仮に国連の主張を日本政府が認めた場合(ないと思うが)、言語の保存など必要な措置を執らなくてはいけなくなるし、不当に支配しているという指摘も出て来そうだ。
そして、軍事施設は撤去しなければならなくなる。
Rob Kajiwaraの主張の多くは、沖縄県民の多数が願っていることではなく、これもまた日本や沖縄と離れたところで進んでいる事態だ。
中国語での拡散、ハワイ、アラスカ、西パプア、カタルーニャ、カシミールなどとへの連携の呼びかけ、英語でアメリカ在住の親中派インフルエンサーを使った米国と国連での活動を考えると、前述のような中国国内の世論操作や日本へのゆさぶりと分断に加えて国際的な世論の喚起を狙ったものと考えられる。
そして、沖縄認知戦はこの地域における中国の戦略的な意図と連動していると解釈できそうだ。その中でも日本にとって身近で大きな問題は台湾併合だ。
台湾併合
現在のところ、ごく一部をのぞいて当事国に有事を望んでいる勢力はない。非軍事的手段による併合の可能性が高く、それは和平協定のような形を取ると予想されている。
ただし、非軍事的手段だからといって、軍事的な緊張がなくなるわけではなく、むしろ逆で軍事的緊張は台湾併合に向けて非常に高いレベルまで上がってゆく。
中国にとっての認知戦は、「軍事的優位を政治的勝利に結びつける」ことであり、アメリカがベトナムやアフガニスタンで軍事力で優位にありながら政治的勝利を得られなかったことから教訓を得ている。
ロシアが行っているデジタル影響工作に比べると異なる点がいくつかある。大きく違うのは「正当性」の主張だ。昔風に言うと、「大義」を示すことが重要とされている。
たとえばロシアのウクライナ侵攻後、国連決議で投票した国のほとんどはロシア非難に回った。これに対して中国の香港に対する弾圧が問題になった2022年の第44回国際連合人権理事会では中国支持派が批判する国のほぼ倍となった。
こうした形で、中国の認知戦は展開されている。台湾や日本に対して、沖縄独立や先住民問題の正当性を中国内外に広めているのは認知戦に必要とされている正当性確保のためなのだろう。
中国の認知戦において、軍事行動は認知形成の重要な基盤である。認知戦は軍事行動と連携し、支え合う必要がある。軍事行動なしに認知戦のみでの勝利はない。
ここでいう軍事行動には示威行動なども含まれると考えられる。この考え方に従えば、中国は軍事的示威行動をより多く目立つ形で行い、軍事侵攻の可能性をちらつかせるようになる。
これはSoWC COA(short-of-war coercion course of action)と呼ばれる手法である。2024年5月に公開されたアメリカのシンクタンクによる「From Coercion to Capitulation」ではSoWC COAを中心にした中国のシナリオが分析されている。
2024年からのタイムラインが描かれており、その中で沖縄での抗議活動が顕著になるのは2026年となっている。しばらくは沖縄認知戦から目を離せない。
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