衆院選敗北、石破政権の「弱体化」が日本経済にとって望ましい理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月29日 17時0分
村上尚己
<自公の過半数割れを受け、今後の政治情勢は不透明になった。通常と異なり、政治情勢の不安定化が株式市場にポジティブに働くだろう>
10月27日に行われた衆議院選挙では、自民・公明の与党は議席を大きく減らして過半数の233議席を割り込み、一方で立憲民主党と国民民主党が前回から大きく議席を伸ばした。
発足したばかりの石破政権は、就任早々に国民から「ノー」の審判を突き付けられ、2025年半ばに参議院選挙を控えて、政権基盤は今後揺らいでいくだろう。当面は、少数与党での政権運営を余儀なくされ、国民民主党、維新の会との政策協調を行わざるを得なくなると見込まれる。
石破政権に対して多くの国民が期待していない理由はいくつかあるだろうが、首相の「ブレブレの発言」への不信感が最大の要因だと筆者は考えている。
石破茂首相は長年安倍政権の政策に対する批判を続けていたが、自ら首相となり株価下落に直面すると金融緩和の必要性に言及した。今回の総選挙では、安倍晋三元首相が使っていた「悪夢の民主党政権」というフレーズを使ったことが話題になった。
「反安倍」のための政治的な方便でアベノミクスを批判していただけなのかもしれないが、立場が変わると平然と変節する政治家だから発言がブレる。言葉が軽い政治リーダーを信用するのは難しいというのが、多くの国民の素直な考えなのだろう。
株式市場にとって最悪のシナリオは?
2012年末以降、安倍政権が戦後最長の長期政権となったのは、金融緩和を徹底することでマクロ経済を立て直し、失業率を大きく低下させて若年世代を中心に国民の支持を得たことが大きかった。与党内から無責任に安倍政権を批判していた石破氏が、過去の自らの発言によって、大きく信認を失っているのである。
金融財政政策の重要性を理解し、緊縮的な経済官僚を十分制御する政治リーダーこそが、実効性が高い政策を行うことできることを安倍政権は示した。今回の総選挙での敗北を受けて、石破首相らがこの点を理解しているかは定かではない。
政権与党が衆議院選挙で過半数を割り込むのは15年ぶりであり、今後の政治情勢は不透明になった。可能性はかなり低いが、石破首相が、政治信条が似ている野田佳彦氏率いる立憲民主党との大連立政権となるのが、株式市場にとって最悪のシナリオだろう。
こうしたリスクはあるが、石破政権の弱体化そのものは、日本経済にとって望ましいと筆者は考えている。自民党総裁選挙で、「経済成長重視」をかかげていた高市早苗氏を、石破首相は僅差で上回った。石破政権を支えているのは岸田文雄前首相らで、石破首相は地方創生を重視している。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
2024衆議院選挙後の政権運営と政策の展望
Finasee / 2024年10月30日 18時0分
-
衆院選で大惨敗、石破首相「居座り」一部野党と連携模索 自公215議席で過半数割れ「勝敗ライン」「戦略ミス」無視 高市氏への交代論が浮上
zakzak by夕刊フジ / 2024年10月28日 11時17分
-
ニュースの核心 石破自民に〝大逆風〟選挙後に大政局「自公過半数割れ」なら退陣確実 次の総裁、最有力は高市氏 手掛ける野党の取り込みとは
zakzak by夕刊フジ / 2024年10月26日 15時0分
-
ニュース裏表 平井文夫 石破おろしで「玉木首相」誕生? 国民民主、連立入りなら首班要求を 高市氏を後継にしたくない菅氏や森山氏、岸田前首相の再登板も
zakzak by夕刊フジ / 2024年10月23日 11時42分
-
石破首相〝戦後最短内閣〟の危機 衆院選終盤情勢で永田町に衝撃、自公で過半数割れの可能性「有権者に見透かされている」
zakzak by夕刊フジ / 2024年10月22日 11時30分
ランキング
-
1米マラソン・オイル、テキサスで500人超削減へ コノコによる買収で
ロイター / 2024年10月31日 11時25分
-
2バイデン氏、トランプ氏支持者を「ごみ」呼ばわりか ハリス氏は距離置く
AFPBB News / 2024年10月31日 11時9分
-
3韓国、北朝鮮に新たな輸出規制 固体燃料型ミサイルの材料が対象
ロイター / 2024年10月31日 15時13分
-
4スロバキア首相、ロシアのテレビに出演 ウクライナ巡りEU批判
ロイター / 2024年10月31日 15時29分
-
5北朝鮮、秘密警察に逮捕された100人以上が行方不明=人権団体
ロイター / 2024年10月31日 15時22分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください