北朝鮮からの「援軍」で、ウクライナの戦況はひっくり返るのか...金正恩の思惑と、戦争への影響とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月31日 17時1分
キース・ジョンソン(フォーリン・ポリシー誌記者)
<最精鋭部隊1万人をロシアに派遣することで、アジアをはじめ世界に戦争が飛び火する恐れが急速に高まっている>
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、「勝利計画」を携えて欧米諸国を行脚している──。そんな報道が目につくようになったのは10月半ばのことだ。
ところが、ようやくロシアとの戦争に終わりが見えてきたのかと思ったのもつかの間、今度は北朝鮮が将兵1万人以上をロシアに派遣しつつあることが明らかになった。第2次大戦以来、ヨーロッパで起きた最大の戦争が、終息どころか、世界に広がる危険が急速に高まっている。
北朝鮮はこれまでにも、ロシアに砲弾などを大量に供給してきた。だが、この決定的に重要なタイミングに実戦部隊を派遣したことは、戦争に疲れ、兵力不足に苦しむウクライナにとって大きな圧力となるだろう。その一方で、ロシアと北朝鮮の関係は、大いに深まることになりそうだ。
北朝鮮の部隊がロシアに派遣されているようだという報道が目立ち始めたのは、10月半ば以降のこと。数日後にはゼレンスキー、さらにはロイド・オースティン米国防長官が事実であることを認めた。
ただ、オースティンは、いまひとつ意味が分からないとも述べている。首をかしげているのはオースティンだけではない。実際、今回の北朝鮮の将兵派遣は、いくつかの重要な疑問を生じさせている。
北朝鮮兵派遣のニュースに見入る韓国の人たち(ソウル、10月21日) AP/AFLO
北朝鮮の派兵規模は焼け石に水ではないのか
ロシアはウクライナで、1日約1000人のペースで兵士を失っている。10月には過去最大の死者を出した日もあった。北朝鮮から1万人の将兵が加わったところで(しかもほとんどは実戦経験がない)、戦況に影響はあるのか。
もっともな疑問だが、命を落とすロシア兵の多くは徴集兵や受刑者であるのに対して、北朝鮮から派遣されるのは優秀な特殊部隊らしい。
韓国の国家情報院によると、北朝鮮のロシア派遣部隊が属する第11軍団は、18旅団計20万人から成る最精鋭部隊で、十分な食事と訓練を受け、体制への忠誠は揺るぎなく、特に潜入工作を得意とするという。最先端技術を駆使した戦闘やロシア語に戸惑うかもしれないが、それを克服できるのは、このエリート部隊をおいてほかにない。
「彼らは攻撃と防御の両面で大きな脅威となるだろう」と、韓国のある防衛専門家は匿名を条件に語った。
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