娘は薬半錠で中毒死、パートナーは拳銃自殺──「フェンタニル危機は中国からの化学攻撃」
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月30日 15時19分
ダン・グッディング
<原料物質が中国で製造されるフェンタニルの押収量は昨年、アメリカの全人口の致死量を上回った。一般の錠剤のように偽装され、「猛毒」とは知らずに摂取してしまう場合もある。再三の要請にも関わらず、中国政府は本気で取り締まっていない、と遺族は訴える>
脳のオピオイド受容体に作用するオピオイド系の化合物の一種であるフェンタニルが原因で死亡した女性の母親が本誌の取材に対し、アメリカは中国の「化学攻撃」を受けていると主張した。
この母親をはじめフェンタニルの犠牲となった人々の遺族が、この危機を煽っている中国に対する制裁を求めている。
2018年にフェンタニルの過剰摂取で娘のアシュリー・ロメロ(当時32)を失ったアンドレア・トーマスは、米通商代表部(USTR)に対し、フェンタニルの違法製造における中国の役割を調査するよう求めている。
トーマスが設立に関与した「フェンタニルに立ち向かう(Facing Fentanyl、以下FF)」と同組織の弁護団は、中国政府がフェンタニル製造を止めるための行動を起こしていないことがアメリカに何兆ドルもの損失をもたらし、毎年何千人もの命を奪っていると主張している。
「何をしても娘を取り戻すことはできない。本当に恐ろしいことだ。ほかの家族にはこんな経験をして欲しくない。だからこの活動を続けている」と、トーマスは言う。
米疾病対策センター(CDC)によれば、フェンタニルを含む合成オピオイドは、米国内で薬物過剰摂取による死亡原因の70%を占めており、その数は増え続けている。
2022年には約7万4000人が合成オピオイドの過剰摂取で死亡しており、この数は2010年の25倍にあたる。
フェンタニルは医療用鎮痛剤として使われ、その作用はモルヒネの100倍と言われる。そのため致死量がきわめて少なく、ほかの薬(錠剤)に混ぜて隠すことができる。
見た目や味、匂いで識別することもできない。そのため薬物乱用に苦しんでいる人だけではなく、無関係の人や子どもが誤って摂取して命を落とすケースもある。
アシュリーの場合は、パートナーから受け取った錠剤の半分を摂取して死亡した。彼女もパートナーもその錠剤にフェンタニルが含まれていたことを知らなかった。錠剤は彼女が以前にも摂取したことがある薬によく似ていたという。
「影響を受けたのは家族だけではなかった」とトーマスは言う。「娘にその錠剤を与えた人、娘を心から愛していたパートナーは翌日、自ら命を絶った。銃で自殺したのだ」
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