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娘は薬半錠で中毒死、パートナーは拳銃自殺──「フェンタニル危機は中国からの化学攻撃」

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月30日 15時19分

トーマスは、たった半錠の薬で当時7歳だったアシュリーの娘は母親を失い、2つの家族が永遠に打ちのめされることになったと述べ、同じような経験をした家族が全米各地にいると語った。

「娘が何らかのドラッグを試してみようと思ったのかどうか、そんなことは関係ない」とトーマスは言う。「問題は、それが防げる死だったということだ」



「FF」はここ数年で約40万人のアメリカ人がフェンタニルによって命を落としたと推定しており、その主な原因は中国がフェンタニル生成に使われる化学物質の輸出を抑制していないことで、過剰摂取の急増を助長していると主張している。

4月には米下院の「アメリカと中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」が、中国がフェンタニル危機の「地理的発生源」だと指摘した。

中国では複数の企業がフェンタニルの原料となる化学物質の製造を行っている。同委員会は、中国政府は2019年にフェンタニル自体の生産を禁止したにもかかわらず、これらの企業に積極的に補助金を出している疑いがあるとした。

米司法省は2023年10月にフェンタニルの密造や密輸に関与した中国の企業と個人に制裁を科すと発表したが、それから1年後の10月24日に発表したプレスリリースの中で、規則が厳しくなっても密造や密輸は適応して活動を続けていると指摘した。

20年にわたって米中貿易に携わってきた経験を持ち、フェンタニル被害者の遺族グループを代表している弁護士のナザク・ニカタールは本誌に対して、「われわれは中国によるこのような不誠実な約束に何度も裏切られてきた」と述べ、外交が失敗した今、さらに厳しい措置が必要だと主張した。

「FF」はUSTRに対し、フェンタニル危機における中国の役割を調査するよう要求しており、USTRは45日以内に調査を行うか否かを決定しなければならない。USTRは本誌に対して、同組織からの嘆願書を受け取り、現在検討中だとメールで回答した。



調査が行われれば、中国に対して追加関税の導入をはじめとするさらなる制裁が科される可能性がある。在米中国大使館の広報担当者は本誌に対して、中国は原料となる化学物質の製造の取り締まりを含め、麻薬対策では「世界で最も強い決意、最も容赦ないポリシーと最も優れた成果」を誇っていると述べた。

同広報担当者は本誌宛てのメールの中で、「中国は互いの尊重、平等と相互利益に基づいて、麻薬対策でアメリカと協力する準備ができている」と述べた。「過剰摂取の根本原因はアメリカ自身にあることを強調しておきたい。アメリカ政府がより効果的な対策を取ることが必要だ」

米麻薬取締局(DEA)によれば、2023年に押収されたフェンタニル混入の偽造錠剤の数は8000万錠超にのぼり、これに加えてフェンタニルの粉末5440キロが押収されている。

これは約3億9000万人分の致死量に相当し、つまりアメリカの全人口を殺すのに十分な量だ。平均的な人を死に至らしめるのに必要な量は、わずか2グラムだという。



娘を失ったトーマスは、「私たちは、よその国が引き起こした静かな化学戦争に打ちのめされつつある。この戦争が私たちの国の一つの世代の命を奪っている」と述べた。

トーマスは、アメリカ政府が行動を起こすことが、彼女のような遺族だけでなく、これから過剰摂取の影響を受けるかもしれない人々にとっても重要だと述べた。

アメリカでは今も1日あたり約150人がフェンタニルの過剰摂取で死亡しており、これは10分に1人が死亡している計算になる。

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