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ネアンデルタール人「絶滅」の理由「2集団が互いに無視していた」...ゲノム解析から驚きの新説

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月4日 11時20分

「トーリン」のあごの化石を手にする考古学者ルドビク・スリマック。ゲノムを解析し絶滅の原因に迫った LAURE METZ

アリストス・ジョージャウ(本誌科学担当)
<「マンドリン洞窟のトーリン」はなぜ生き残れなかったか。フランス南部での新発見からネアンデルタール人とホモ・サピエンスとの大きな違いが...>

2015年にフランス南部で見つかった「最後の」ネアンデルタール人の化石が、これらの古代の人類の歴史に新たな光を投げかけている。

9月11日付で科学誌「セル・ゲノミクス」(オンライン版)に発表された論文によると、このネアンデルタール人は仏ポール・サバティエ大学の考古学者ルドビク・スリマック率いる研究チームによってフランス南部のローヌ渓谷にあるマンドリン洞窟で発掘され、「トーリン」と名付けられた──J・R・R・トールキンの小説『ホビットの冒険』に登場するドワーフ族の最後の王の1人にちなんだ名だ。

「マンドリン洞窟のトーリンは最後のネアンデルタール人の1人だ」とスリマックは学術系ウェブサイト「ザ・カンバセーション」に書いている。

スリマックらはトーリンのゲノムを解析。その結果、驚きの新事実が明らかになった。トーリンは4万2000~5万年前の孤立した小集団で暮らし、その集団はこれまで発見されていなかった特に古い系統の集団であることが分かった。約10万年前に「後期ネアンデルタール人」の系統から分かれ、5万年以上にわたって遺伝的に孤立していた系統らしいという。

最新の分析結果は、最後のネアンデルタール人たちの本質をめぐる従来の通説に反していると、スリマックは本誌に語った。彼らが絶滅した原因は議論の的になっているが、今回の新発見が解明の手掛かりになるかもしれない。「人類最大の絶滅に関する既存の知識を塗り替えることになる」

フランス南部の洞窟で発見された「トーリン」 LUDOVIC SLIMAK

ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)は私たちホモ・サピエンスに最も近い種だ。かつてユーラシア大陸で暮らしていたが、約4万年前に絶滅した。地域や時期によっては現生人類と共存し、交配までした。

5万年に及んだ孤立状態

「これまで、絶滅時には遺伝的に均質な集団が1つしかなかったと考えられてきた。だが今回、絶滅当時2つ以上の系統が存在していたことが分かった」と、論文の筆頭執筆者の1人であるデンマークのコペンハーゲン大学の集団遺伝学者ターシカ・ビマラは報道発表で述べている。

トーリンが属していた集団は約5万年にわたってネアンデルタール人の他の集団と交流がなかったようだ。

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