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「子供がいる女性の部下は早く帰らせよう」は間違い? 組織の成長を阻む「性別ガチャ」の克服法とは

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月9日 19時0分

著作家・メディアプロデューサーの羽生祥子氏(本人提供)

日本のD&I事情を大きく変えた「女性版骨太の方針」

──2022年に前著『多様性って何ですか? D&I、ジェンダー平等入門』を執筆されたときから、日本企業の女性活躍や、DEI事情(※)にどんな変化がありましたか。※DEIとは、あらゆる人が公平に扱われ、尊重され、組織・社会において包括される状態を目指すこと。「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティ(公平性)」「インクルージョン(包括性)」の頭文字をとったもの。

大きな変化は、2023年6月に政府目標として、「女性活躍・男女共同参画の重点方針」(女性版骨太の方針)が発信されたことです。私も有識者会議の委員として方針の策定に関わりました。具体的には、企業における女性登用の加速化という観点で、プライム市場上場企業に対し「2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める」「2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す」と明示したのです。

これまで政府が掲げていた目標は、「2030年までにプライム市場上場企業の平均で女性役員比率を30%以上」というもの。そこから大きく前進したのは、まず「2025年」の目標を加えたことで、経営層が自分たちの在任中にアクションせざるを得ない状況になったこと。そして、プライム上場企業の平均ではなく、個々の会社に「30%以上」の目標を課し、達成に向けたプロセスまで有価証券報告書に書くよう求めたことです。

これにより、企業のトップは数値目標の達成が先送りできない課題と捉え、ようやく本腰を入れ始めました。人事やダイバーシティ推進担当にとって、これは追い風だと思います。

「人の家庭の育児分担に、会社は首をつっこめない」は過去の遺物

──ダイバーシティ推進に良い流れができているなかで、継続的な課題は何でしょうか。

役員比率などの差を生む根本の原因は、家庭における「性別ガチャ」です。衝撃的なのは、「家事育児時間」の国際比較のデータです。「母親の方が父親より家事をやっている」という実態は、多くの人が感じていることでしょう。ただし、女性が男性の5.5倍も家事育児をしているという突出した偏りがあるのは世界的に見て日本だけ。OECD全体だと約2倍にとどまっているのです。しかも、日本女性の有償労働の時間は世界でトップクラス。つまり、無償も有償も合わせた労働時間が非常に多く、睡眠がほとんどとれていないのです。

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