想像を超える大洪水、濁流に飲み込まれた車から脱出するには? スペイン洪水に学ぶ生き残りの具体策
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月7日 17時56分
井口景子(フリーライター)
<「雨も降っていないのに洪水がきた」「まるで津波」──過去の常識が通用しない大災害を乗り切るために知っておきたいこと>
10月29日午後、スペイン東部・バレンシア州の町パイポルタに泥水が流れ込み始めた当初、未曾有の危機の到来を予見した住民はほとんどいなかっただろう。当時、雨は降っておらず、警報も周知されていなかった。だがその後、上流の豪雨による鉄砲水はあっという間に勢いを増し、水位3メートルに到達。「まるで津波」「いや、ダムの決壊だ」と評される激流が、逃げ惑う人や車を飲み込んで、街の全てを破壊しつくした。
【動画】「津波のような洪水」に飲み込まれる自動車
気候変動が加速するなか、「前例がない」「100年に1度」の大災害が世界各地で頻発している。こうした危機では、避難のタイミングにも被害規模にも、これまでの常識が全く通用しない。想定外の災害に遭遇したときに、どうしたら生き延びる確率を少しでも高められるだろうか? 知っておきたいポイントを探った。
■浸水した車から脱出する方法
スペインの洪水では運転中の車が濁流に飲まれ、車内に閉じ込められて溺死した人が多数いた。路上や冠水した地下駐車場には今も無数の車両が積み重なっており、犠牲者がどこまで増えるか見当もつかない。
車は冠水の水位が60センチを超えると、水圧のためにドアの開閉が困難になる。そんなときは、とにかく電気系統が生きているうちに窓を開けて脱出する。念のため、窓ガラスを割る緊急脱出用ハンマーも常備しておきたい。窓ガラスは四隅を狙うと割りやすい。
脱出できず、車内に水が入ってきてもパニックは禁物。直感に反するが、車の中と外の水圧が均等になればドアを開けやすくなるので、車内外の水位がほぼ同じになるまで焦らずに待つ。エンジンが前方に搭載された車は後方のほうが浮かびやすいため、空気が残る後部座席に移動して冷静にタイミングを計ろう。
■自宅の水位が上がってきたら
建物内にいて水位が急激に上昇してきたら、大急ぎで上層階に移動し、ライフジャケットやプールで使う浮具を用意する。ない場合は、密閉した500ml~1リットルの空のペットボトルを数個まとめて両脇や胸に固定することで浮力の助けとなり、流されたときに呼吸を確保しやすい。また、目立ちやすい明るい色(赤、オレンジ、黄色など)の服や、反射材付きの衣類を身に付けておくと、水の中や暗闇で発見してもらえる確率が多少は高まるかも。
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