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日本のGDPを抜いたドイツの「実は厳しい」現実...連立政権は崩壊へ、ショルツ首相が財務相を解任の衝撃

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月7日 19時45分

ドイツのオラフ・ショルツ首相 Annegret Hilse-Reuters

木村正人
<米大統領選でのトランプ前大統領の圧勝にドイツの退潮も重なって、ウクライナの出口戦略にも大きな影響が及びそうだ>

[ロンドン発]オラフ・ショルツ独首相(社会民主党=SPD)が6日、経済財政政策を巡り対立する自由民主党(FDP)のクリスティアン・リントナー財務相を解任した。FDPは3党連立から離脱する。来年9月の連邦議会選(下院)がいつ前倒しされて実施されるかが焦点だ。

5日投票の米大統領選でドナルド・トランプ前大統領が地滑り的勝利で復活したばかり。米国のウクライナ支援縮小がほぼ確実視される中、輸出主導型経済が限界に達したドイツで政治の液状化が進む。屋台骨がぐらつく欧州は間違いなく混迷の時代に突入した。

ショルツ氏は有権者の信頼回復を念頭に「彼(リントナー氏)は利己的で私の信頼を何度も壊してきた。このような状況ではまともな政府の仕事はできない。私たちの提案を実行に移す意思を全く示さなかった。無責任な行動だ」と、解散を求めたリントナー氏に責任をなすりつけた。

「大きな政府」と「小さな政府」の対立

左派のSPDと緑の党は「大きな政府」を信奉し、公共サービスや気候変動対策のための支出を主張している。一方、経済的にリベラルなFDPは支出を抑えて減税する「小さな政府」を望んでいる。もともと水と油が交じった3党連立の基盤は脆弱で、壊れるのは時間の問題だった。

昨年11月、連邦憲法裁判所が予算政策の一部を違憲とし、連立政権の財政計画を破綻させた。手元に残ったコロナ対策資金を社会政策や気候変動対策に回すことができなくなった。これで予算に600億ユーロの穴が開き、連立政権内の亀裂を露呈させた。

ショルツ氏は来年1月に信任投票を実施する方針で、3月に総選挙が前倒しされる可能性が強い。世論調査で最大野党の保守政党、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の支持率は30%を超え首位を独走、2番手の極右政党「ドイツのための選択肢」とともに早期解散を求めている。

欧州の政治も右旋回

今年のドイツ経済予測は0.3%成長から0.2%縮小に修正された。昨年の0.3%縮小に続き、実に20年以上ぶりという2年連続リセッションに直面する。インフレの後遺症やシリア内戦やウクライナ戦争による移民激増で、欧州の政治の針も米国と同様、右に大きく振れている。

「ドイツのための選択肢」は欧州議会選に続き、9月に行われた3つの州議会選で大躍進した。テューリンゲン州議会選ではCDUを抑えて第1党に躍り出た。ナチスの記憶が残るドイツの州議会選で極右政党が第1党になるのは初めてで、欧州に激震が走った。

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