第二次トランプ政権はどこへ向かうのか?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月7日 21時20分
トランプ氏は、時にバノン氏などと相談して過激発言をしたり、わざとツイートを炎上させたりして求心力を維持。それが行き過ぎると、イバンカ夫妻やホワイトハウス官僚の言うことを聞いて、常識的な政策を行うなどの振幅がありました。
ところが、今回の陣容は異なります。まず、トランプ氏の側近としては、イーロン・マスク氏と、バンス次期副大統領という、天才級の頭脳が控えています。マスク氏には、良くも悪くも文明論的な独自の世界観があり、バンス氏には議会との人脈、軍歴、ビジネス歴などを通じて獲得した実務能力があります。
彼らが、おそらく政権の軸となると思われますし、既に78歳と高齢のトランプ氏は、これまで以上に彼らを重用し、その周囲には新しい世代の実務家が集まるかもしれません。日本の外交においては、一期目の場合は安倍晋三氏の必死の努力で、基本的には反日政策に走る潜在リスクを、首脳間の信頼関係で最小化するという作戦が成功しました。ですが、今回はトランプ主義の裏にマスク氏の思想、バンス氏の新保守主義などが控えていることから、彼らの深謀遠慮も読み解きながらの外交が必要です。
第2は、経済政策です。現在、最新の時点では物価は相当程度の沈静化をしています。外食は下がらないものの、ファストフードは安売りの必要性に追い込まれています。卵や缶コーラは下がらないものの、スーパーは多くの商品で安売りを始めました。
これは、中国経済の失速を受けて原油価格が沈静化したこともありますが、何よりも連銀のパウエル議長による「失速しない程度に景気を減速させる」というギリギリのソフトランディング策が成功しているからでもあります。そう考えると、雇用情勢の悪化はその副作用とも言えます。
ですから、雇用を重視して景気を再加熱させるようだと、再び悪性のインフレが出るわけで、経済の舵取りはそう簡単ではありません。第二次トランプ政権は、そこでどんな手が打てるのかというと、かなりカードは限られると思います。そんな中で、不法移民を大量追放すれば農業とサービス業は回りません。中国製品に高額関税をかければ消費は一気に冷え込みます。
無理をしてスマホやタブレットを、アメリカの国内生産に切り替えれば、テスラのようにロボットを使った省力化が進み雇用は増えません。そうした中で、巨大な現状不満を受けて当選してもできることは限られています。ここは、待ったなしの課題であり、政策を最適解に寄せることができるのか、厳しく問われると思います。
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