米国民がトランプを選んだ以上、貿易相手国は対米依存を脱却するしかない
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月12日 13時20分
ルノー・フカール(英ランカスター大学経済学講師)
<関税引き上げを訴えて返り咲きを果たしたトランプ。経済政策がどうなるにせよ、世界は「自立」するしかない>
ドナルド・トランプの勝利と、全ての輸入品に高関税を課すという彼の強硬姿勢は、世界経済にとって大きな問題となる。
アメリカは技術大国だ。研究開発費は世界一。過去5年間のノーベル賞受賞者は、アメリカ以外の国の受賞者の合計を上回る。その革新の才と経済的な成功を、世界は羨むしかない。しかし各国が目指すべきなのは、アメリカへの過度な依存を避けることだ。
こうした状況は、民主党候補のカマラ・ハリスが勝利していても大きく変わることはなかった。
トランプが唱える「アメリカ・ファースト」は、実はこれまで超党派で推進されてきた政策だ。少なくとも民主党の大統領だったバラク・オバマが打ち出した「エネルギー独立」政策以降、アメリカは技術的な優位を維持しつつ、労働力の国外流出を防ぐため、もっぱら内向きの政策を掲げてきた。
トランプが前回の任期中に下した主要な選択の1つは、国内の生産者を守るために大半の貿易相手国に高関税を課し、国内消費者に物価上昇をもたらす政策を導入することだった。例えば2018年には、輸入洗濯機の価格が関税により国内製造分に比べて12%高かった。
トランプよりは穏やかだったが、ジョー・バイデン大統領も中国産製品の関税を引き上げた。電気自動車(EV)には最大100%、ソーラーパネルは50%、リチウムイオンEV電池は25%。国内の製造業は保護するが、脱炭素社会の実現へ向けた動きを遅らせる選択だった。
バイデンは対EU関税を停止する一方で、より大きな混乱を招く補助金競争に火を付けた。アメリカのインフレ抑制法には、EVや再生可能エネルギー分野への3690億ドルもの補助金が含まれ、CHIPSおよび科学法では国内の半導体製造に520億ドルの補助金が投じられている。
不干渉主義を貫くトランプ
アメリカの産業政策は内向きかもしれないが、他国に明らかな影響を及ぼしている。中国はここ数十年、主に輸出に基づく経済成長を果たしてきたものの、今は過剰生産という問題に直面し、国内消費の促進と貿易相手国の多様化を図っている。
財政予算に関する縛りが非常に厳しい欧州諸国も、補助金競争に参戦している。成長が鈍化し、産業モデルが大いに疑問視されているドイツは、アメリカの補助金に対抗して、スウェーデンのリチウム電池メーカーのノースボルトに国内製造を続けてほしいがために9億ユーロ(約1470億円)を援助している。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
トランプ再選で「ドイツ経済悪化」3つのリスク 1期目より2期目のほうがリスクが大きい理由
東洋経済オンライン / 2024年11月14日 8時40分
-
トランプ再登板で日本人の生活はどう変わるのか 第2次トランプ政権にとって主要な武器の中身
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 7時30分
-
アングル:「トランプ外交」再び、戦火の世界が向かうのは混乱か緩和か
ロイター / 2024年11月7日 17時21分
-
トランプ氏復帰、世界中が注視 ウクライナへの軍事支援に変化も 中国「不確実性増す」
産経ニュース / 2024年11月6日 21時30分
-
トランプ氏、中露北首脳とディール重視 不透明感も IPEF破棄 有言実行か
産経ニュース / 2024年11月6日 19時3分
ランキング
-
1企業の保険料増「不公平」 106万円の壁で日商会頭
共同通信 / 2024年11月18日 17時23分
-
2テレビを保有している友人が「今まで一度もNHKの受信料を払っていない」と言っていましたが、確認されることはないのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月17日 6時0分
-
3《小学校の隣に高層タワマンを建築》渋谷区と大手デベロッパーが組んだ再開発事業にジーンズメイト創業者(79)が憤慨「大人が子どもの安全をないがしろに」
NEWSポストセブン / 2024年11月18日 11時13分
-
4「保険会社の甘い囁きで解約すると480万円の損」荻原博子が教える絶対解約してはいけない"超お宝保険"の種類
プレジデントオンライン / 2024年11月18日 10時15分
-
5「並盛」は20円アップ すき家が牛丼の値上げを発表 国産米の高騰受け 11月22日から
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月18日 16時7分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください