習近平は「総書記」と「国家主席」どちらが正しいのか?...中国政治システムの「本音と建前」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月19日 16時40分
中国は儒教の国です。私も「何だかんだ言いつつも年上を尊重する文化が今でもある」と思っていただけに強い衝撃を受けました。健康上の理由と発表されましたが、「いや、無理矢理連れ出されたのだ」という意見もあり、真相は明らかにされていません。
現在の常務委員会は習近平総書記を含む7名で構成されており、この常務委員会の多数決で軍事、外交、内政など中国の全てが決まります。前述した国務院は、共産党常務委員会の指示に従って行政を行うというイメージです。
「常務委員会ねえ。3期目の習政権以降はメンバーは全員、彼の元部下みたいな人。そういうメンツでニュートラルな多数決になるわけがない」
これが一般的な評価だと思います。しかし、合議制になっているという意味では、常務委員には意味があると私は思っています。ロシアの「全てはプーチン大統領の頭の中」という独裁状態と比較すれば、少なくとも仕組みとしては極端なことが起きにくいと考えるためです。
政府のポジションより重要な共産党のポジション
「中国の政治家の序列は、何よりも共産党の序列なのだ」
改めて私が思ったのは、2023年7月。女性スキャンダルが報じられた秦剛外相が1カ月ほど公の場に姿を現さず、病気なのか軟禁されたのか、さまざまな噂が飛び交った時のことです。
中国では「外交部部長」と呼ばれる外務大臣といえば、どこの国でも最重要と言えるポジション。行方不明というのは大問題になってもおかしくないはずです。それなのに中国では、王毅前外務大臣が何事もないかのように代行を務めていました。
キャリア外交官だった秦剛は習近平の抜擢で駐米大使を経て外相になりましたが、共産党でのポジションは中央委員止まり。共産党の序列で言うと政治局員ですらない下っ端です。かたや外相を退いてから共産党の政治局局員になった王毅は、断然格上。
中国の政治においては、政府でのポジションより共産党内のタイトルが重要で、「共産党で偉い人=国でも偉い人」となります。
ちなみに外交の世界はカウンターパートが重要で、同じ序列の人間が会わないなら訪問しない、迎えないという暗黙のルールがあります。
たとえば2023年に米国のブリンケン国務長官が訪中した際、政治局員であるカウンターパートの王毅前外相が出迎えました。習近平総書記との会談もあったのは「米国を重視しています」というメッセージです。
ところが同年、日本の林外務大臣の訪中で対面したのは秦剛外相。ポジションは同じ “外務大臣同士” で、形式的にはカウンターパートになりますが実質的には格下、政治局員の王毅には出迎えられなかった──あの時期の中国にとって、日本はそんな存在だったということかもしれません。
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