「予測不能な男の再登板」ウクライナ・ガザ・中台・朝鮮半島・・・世界の安全保障の気になる行方は?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月13日 14時16分
一方、中国との関係は変化しない可能性が高い。対中関係はおそらくアメリカの戦略的外交政策の主要課題であり、ジョー・バイデン米大統領はトランプ前政権の対中政策をおおむね継続してきた。トランプ次期政権は路線強化に乗り出すだろう。
トランプは対中関税引き上げを繰り返し口にしており、再び大統領に就任した後は有言実行する可能性がある。とはいえ、中国の習近平国家主席との現実的な取引に前向きになる可能性も十分にある。
アジアの同盟国に対するトランプの姿勢には大きな疑問符が付く。台湾をはじめ、フィリピンや韓国、さらには日本に対しても、防衛協定をどこまで守る気があるのか。熱意はあまり感じられない。
1期目の対北朝鮮関係のように、トランプは戦争が危ぶまれるほど強く出ることがある。北朝鮮が17年、ICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を行ったときがいい例だ。
北朝鮮の金正恩体制は予測不可能だが、それはトランプも同じ。再び衝突しかねない一方で、北朝鮮と関係を深めているロシアとの取引の一部として、トランプが北朝鮮の核武装を容認することもあり得る。
そうなれば、トランプは中国に対して、影響力を増すことになるだろう。ロシアと北朝鮮の関係強化に、中国は神経をとがらせている。
2期目のトランプ政権が発足するまでに、アメリカの同盟国も敵対国も自らの立場強化に努めるはずだ。政権移行期間は、トランプの下では実現がより困難なことを既成事実化するための残り時間でもある。
トランプはウクライナや中東で停戦を要求するとみられることから、当事者がそれまでにより望ましい「現状」を実現しようとするだろう。そのため、戦闘が激化する可能性がある。両地域で進行中の人道危機にとって悪い知らせだ。
「トゥキディデスの罠」に
朝鮮半島の緊張が高まる事態も想定される。北朝鮮は新たなミサイル発射実験や核実験を行い、実績を積み上げようとするかもしれない。
欧州と中東で戦闘が激化し、アジアが緊張すれば、全方位的にアメリカと同盟国の関係は悪化するだろう。
欧州は、トランプがEUやNATOに加盟する同盟国の頭越しに、ロシアと取引しかねないと不安視している。そんな事態になれば、ウクライナ(あるいは欧州全般)がロシアと結ぶあらゆる協定の持続性は損なわれるだろう。
欧州の防衛能力が相対的に貧弱で、アメリカの核の傘の信頼性が低下する状況は、プーチンの帝国主義的野望をあおるだけだ。
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