「予測不能な男の再登板」ウクライナ・ガザ・中台・朝鮮半島・・・世界の安全保障の気になる行方は?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月13日 14時16分
中東ではネタニヤフが完全な野放し状態になりかねない。アラブ諸国の一部は、イスラエルがイランやその代理勢力を攻撃することを歓迎するかもしれないが、パレスチナの苦境をめぐって自国民から反発を浴びる懸念は根強い。この長年の問題を解決しない限り、中東和平はもちろん、地域的安定もほぼ実現不可能だ。
アジアの事情は異なる。この地域の問題はアメリカの後退ではなく、予測不可能で潜在的に制御不能な対立のエスカレートだ。トランプ次期政権下では、覇権国家が新興国家の台頭を恐れて戦争が不可避になるという「トゥキディデスの罠」に、米中がはまる可能性がはるかに高い。
ならば、アジアにおけるアメリカの同盟国は長期的に安全を保障されているのか。インドネシアやインドなどは、中国との関係再強化を検討するのではないか──。
世界が高まる不確実性と不安定性に直面しているのは否定しようがない。トランプの就任を待つまでもなく、その道のりは既に始まっている。
最悪の場合、自分は決して間違わないと胸を張るトランプの主張は木っ端みじんになるだろう。地政学は不動産業より複雑だと気付く頃には、トランプ一派がバイデン政権のせいにしてきた混乱そのものが現実になっていても不思議ではない。
Stefan Wolff,Professor of International Security, University of Birmingham
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