元自衛官、米軍特殊部隊員...海外に別荘を持つ「大金持ち」からホームレスになった波乱万丈人生
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月13日 19時55分
そのソ連スパイをCIAに引き渡す前、日本の公安警察に横取りされ、スパイはすぐさまソ連に送還された。アメリカ側はそれを知って怒ったが、仕方がなかった。兄貴は、日本政府内部にソ連の内通者がいるかもしれないと深く疑った。
兄貴の能力と年功を考えると、自衛隊に留まり、ステップアップすることができたに違いなかった。
しかし、7年間の軍生活を送った彼は、結局退役を選んだ。
理由は、故郷に帰って病気の重い父の世話をしたいことと、新しい仕事に挑戦して自分の能力を試してみたいことだったという。
自衛官を辞めた後にもボディーガードがつく生活
日本の自衛隊から退役するのは難しくないが、面倒なのは彼が所属していたグリーンベレー隊員の身分と、かつて実行した任務との関連だった。
彼はソ連のスパイを何度も逮捕したことがあるので、すでにソ連国家保安委員会(KGB)のブラックリストに入っている可能性が高かったし、日本赤軍(反米極左組織)が彼に恨みを抱いている可能性も否定できない。
そのため、米軍は日本の自衛隊が兄貴の退役後の身の安全を保証することを望んだ。自衛隊側も、これから何らかの特別な事件が発生したときに兄貴の力を生かせるかもしれないと考えた。
彼は表向き、軍隊を離れたと言っても、実質的には自衛隊に席がまだ残っていたのだ。
どこへ行っても、後ろにはいつも私服を着た自衛隊員2人がつくことになった。1人は、兄貴のボディーガードとして彼の安全を守るため、もう1人は、自衛隊(警察を含む)が彼とのコミュニケーションを維持するためのチャンネルとして配置された。
彼女とのデートの時もボディーガードがついていったし、夜にバーでお酒を飲むときもボディーガードがそばに座って一緒に飲んだそうである。恐ろしいことに、この気まずい不自由な日々が5年も続いたという。
建設業へ...「先見の明」と勤勉さのおかげで事業は成功
兄貴はその時期、主に東京都内の警察や建設関係の仕事をやっていた。例えば、都内の道路標識を古いものから新しいものに交替する作業などを多くしたという。
完全に「自由の身」になってからは他のいろいろな仕事もやった。80年代の日本経済は躍進し、建築業は先行きが明るいと思ってそれを選んだ。
まず建築現場の労働者から始まり、頑張って多くの建築業界の免許を獲得した。その後、兄貴は請負業者になり、自分の会社を設立し、建設省(現・国土交通省)から受けた建築と道路舗装などの仕事が多かった。
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