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元自衛官、米軍特殊部隊員...海外に別荘を持つ「大金持ち」からホームレスになった波乱万丈人生

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月13日 19時55分

しかし、問題はお金ではなく、身体への影響だ。30数年経った今でも後遺症が残っている。痛みがたまに出るだけでなく、年に1回その痛みは30分ぐらい続き、意識が突然なくなり頭が真っ白になる時もあるのだという。

2つ目は、親族の事業参加によって損失がもたらされたことだ。兄貴の事業の最盛期に、彼の兄とその息子が入社した。彼らは能力が足りないのに、社長が自分の親族であることで偉そうになった。結局、現場労働者の機嫌を損ねて、取引先の感情を害してしまったことがあった。

3つ目は、工事中の事件や事故が頻繫に発生したという問題だ。兄貴のような請負業者の場合、会社に所属している労働者がいるほか、日雇い労働者を雇うこともよくあるが、彼らを見つける最も簡単な方法はホームレスの中から募集することだという。

これについては、また注意しなければならないことがある。ホームレスの中には悪い人間が混ざっているので、下手をすると何か事件が起こるかもしれない。

兄貴には痛ましい教訓があった。

台東区の北千住、南千住には、今でも多くのホームレスがいる。荒川の千住新橋下の河川敷には、彼らが住みやすい環境が揃っているようだ

雇った日雇い労働者が殺人事件を起こした

ある時、兄貴は山谷からホームレス2人を雇った。山谷は台東区北東部の出稼ぎ労働者の集まる場所であり、以前は犯罪が多い地域でもあった。

結局、仕事をしている間に2人は口論になり、そのうちの1人がナイフでもう1人を刺し殺してしまった。彼は知らせを聞いて現場に駆けつけると、殺人をした男を捉えて警察に通報した。その後、兄貴は殺人容疑者の雇い主として、警察に呼び出され、10日間尋問を受けることになった。

また、別の悩みごともあった。彼が請け負った工事を、別の請負業者に請け負わせたことがある。その業者は規則に違反し、休日にも労働者を働かせ、ある労働者が高所から落ちて死んだ。結局、兄貴は警察に呼ばれ、またも10日間取り調べられ、「注意処分」を受けた。

これらの事件と事故は、会社の業務に影響を与えたに違いない。

要するに、こういったさまざまな原因があり兄貴の事業はだんだん下り坂になっていった。

もちろん、彼の贅沢な生活も何年か経つと終わってしまった。

その後、さらにある突発的な事件が発生し、兄貴の人生はとことん苦難な深淵に落ちていくことになる。

詳しい話は次回に持ち越すことにする。

※ルポ第12話(11月20日公開予定)に続く

(編集協力:中川弘子)

[筆者]
趙海成(チャオ・ハイチェン)
1982年に北京対外貿易学院(現在の対外経済貿易大学)日本語学科を卒業。1985年に来日し、日本大学芸術学部でテレビ理論を専攻。1988年には日本初の在日中国人向け中国語新聞「留学生新聞」の創刊に携わり、初代編集長を10年間務めた。現在はフリーのライター/カメラマンとして活躍している。著書に『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)、『私たちはこうしてゼロから挑戦した──在日中国人14人の成功物語』(アルファベータブックス)などがある。

【動画】樺太から撤退した船がソ連軍から攻撃を受けて沈没

YouTubeチャンネル「シリーズ「樺太を語る」辻力さん(樺太の歴史、後編)」より

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