アメリカの歴史に名を残す「トランプはこの100年で最も力強い政治家に」地滑り的勝利には理由がある
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月18日 17時18分
サム・ポトリッキオ(本誌コラムニスト、ジョージタウン大学教授)
<黒人や中南米系も味方に付け、総得票でもハリスを上回り、共和党の支持基盤を広げた。トランプの歴史的勝利を徹底分析>
アメリカの大統領が「非連続」の2期8年を務めるのは異例中の異例、19世紀のグローバー・クリーブランド(第22・24代大統領)以来のことだ。1930年代のニューディール政策時代と同じくらいに、この「トランプ時代」はアメリカの歴史に名を残すことだろう。
地位と権力と権勢にひたすら執着するドナルド・トランプ前大統領にとって、この世で最高に重要な人物となることは無上の喜びであるに違いない。しかも細かくちぎれて分断された有権者層の全てで前回よりも支持率を上げた。まさしく前代未聞、想定を超える大勝利だ。
アメリカでは普通、長く表舞台に立つ人ほど人気が下がる。ところがトランプ人気は上がる一方。共和党の大統領候補が一般投票(全米の総得票数)でも勝利したのはジョージ・W・ブッシュの2選目以来20年ぶりのことだ。
10年近く前に初めて大統領選に出馬したときメキシコからの移民を「強姦魔」と罵ったトランプが、今回は中南米系の男性有権者からの支持率で民主党のカマラ・ハリス副大統領を10ポイントも上回った(前回は23ポイントの大差でバイデンに負けていた)。
トランプは共和党の伝統的な支持層を塗り替えた。黒人男性からの支持は従来の倍近くに増えた。ロードアイランド州やニュージャージー州、ニューヨーク州といった民主党の牙城でも、共和党大統領候補としては数十年来の好成績を収めた。
民主党はトランプをファシストで男尊女卑の人種差別主義者と非難してきたが、それで票が動くことはなかった。逆に、20年前には絶滅の危機と評されていた共和党の支持基盤が広がった。
かつての民主党は、黒人や中南米系など人口増加の著しい有権者層を味方に付けていた。共和党が21世紀を生き延びるにはリベラル寄りに舵を切るしかないとも思われていた。
そんな政界の通念を、トランプは打ち砕いた。そして彼自身が新たな現実を創造するトランプ時代が始まった。有罪評決を受けた重罪犯でも国政のトップに立てるし、もうすぐ80歳でも大統領になれる時代だ。こうなれば何でもあり。もはや政治評論家の出番などなさそうだが、トランプ圧勝の大統領選を終えた今、確実に言えることが5つある。
◇ ◇ ◇
①「異常」ではなくスタンダードに
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