アメリカの歴史に名を残す「トランプはこの100年で最も力強い政治家に」地滑り的勝利には理由がある
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月18日 17時18分
アメリカにとって21世紀はトランプの世紀となった。バラク・オバマは人種差別に基づく奴隷制のあった国で初の黒人大統領となったことで歴史に名を残したが、今やトランプこそが最大の歴史的な人物だ。第45代と第47代の大統領だとか、オバマの後継者を2人も打ち負かしたというだけではない。生きている限り、トランプは共和党で最大の影響力を持ち続けるだろう。
首都ワシントンで演説し敗北を認めたハリス副大統領 ANDREW HARNIK/GETTY IMAGES
一つの政党をこれほどまでに支配できた人物はいまだかつて存在しない。2016年の大統領選でトランプが勝利したのは時代遅れの「選挙人団」制のおかげでも、まぐれでもなかった。ある識者に言わせると、もはや「ドナルド・トランプは異常現象ではなく標準」なのだ。
②地位の喪失から生まれた復讐心
トランプはこの国の時代精神を最も鋭く読み取っている。一部のエリートに対する大衆の怒りを、ほとんど直感で理解している。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストであるデービッド・ブルックスに言わせれば、こうだ。
「聞こえてくるのはリスペクトの再分配だ。高学歴の者は祭り上げられ、その他の者は姿が見えない。特に男子はきつい。高校生になると成績上位10%の3分の2は女子で、下位10%の約3分の2が男子だ。学校教育は男子に味方しない。それが個人の一生にも国全体にも影響を及ぼす」
選挙戦終盤で、トランプはジョー・ローガンやネルク・ボーイズなど、若い男性に人気のポッドキャスト主宰者に接近した。結果はどうか。トランプ当確が報じられた途端に、SNSではこんな文句が拡散した。
「アメリカの国としての性別が判明したぞ、男の子だ!」。共和党全国大会でジェームズ・ブラウンの名曲「マンズ・マンズ・ワールド(男の世界)」と共にトランプを登場させた演出も秀逸だった。
7月にペンシルベニア州の集会で支持者を前に演説 SPENCER PLATT/GETTY IMAGES
トランプはその生涯を通じて今も移り変わる自分の地位にひたすら執着してきたが、手に入れた地位を失うのは、誰にとっても悲しいことだ。この点を説明するために、私は常々、ある些細でばかばかしい例を挙げてきた。
私はあまりに出張が多いので、航空会社から超エリート会員の扱いを受けてきた。上位0.1%に入る上客向けに用意されたステータスよりも高い、内緒の地位だ。しかしある年、育児休暇を取ったためその地位を失った。それでも表向きの最高ステータスは維持できたが、個人的にはすごく深刻な喪失感があった。
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