オードリー・タンは生活にも「/」を入れる...「スラッシュワーカー」になる方法、超える方法
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月15日 11時35分
オードリーの名刺に所属する組織を書こうとすれば、肩書きが七つも八つも並ぶことになる。
彼女は14歳のときから、「ネット上では、人はなぜすぐに相手を信頼したり憎んだりするのか」というテーマに深い興味を抱き、研究を続けてきた。しかし、このテーマはあまりに大きく、また参考にできる研究もなかった。そこで、自分でプログラムを書いていくつものコミュニティを立ち上げ、そのなかで人々がどう関わり合うかを観察したり、別の人が作ったコミュニティに参加したりするようになった。多くの国際NGOに参加する理由がそれだ。
オードリーはスラッシュ族なのか
オードリーはいかにも「スラッシュ族」に見えるが、実際には「単槓(ダンガン)」(中国語では体操競技の鉄棒の意)、つまり一つのテーマを徹底的に追及するタイプだ。
14歳から今に至るまで、テーマを変えることなく研究を続けている。名刺に肩書きではなく研究テーマだけを書くなら、そこにスラッシュは入らない。
オードリーが参加する七つのNGOは、オランダ・ニューヨーク・スペインなどを拠点としているため、それぞれの土地に社会的なネットワークを持っている。七つのNGOが理事会を開くのは多くて四半期に一度、あるいは半年に一度くらいだ。オードリーにとっては、時間的な負担は少ない割に大きなメリットがある。
NGOごとに異なる人脈ができ、互いに力を貸し合ったり、知識を共有したりできることだ。「パンデミック後の世界はどう変わるか」といったテーマや、長年研究してきたテーマについて討論すれば、七つの異なる視点からの意見を聞ける。今までとは違う視界が開け、新たな世界に触れることができるのだ。
もはや「スラッシュ族」はごく一般的な働き方になっているが、数年も経てば、職業や肩書きではなく、探求するテーマそのものがアイデンティティになる時代が来ると考えられる。
かつての「一つの会社に勤め上げる」という考えはもはや消えつつあるし、退職金も期待できない。そんな時代だからこそ、会社から与えられた肩書きではなく「自分が何に興味を持ち、何を専門にしているか」によって評価されたいと考える人が増える。
専門分野を追求する人、すなわち「単槓」こそが特別な存在として尊重されるようになるだろう。
一つの分野に専念し、徹底的に掘り下げていける人は決して多くない。数が少なければ、それだけ重視されるはずだ。
本業以外に20パーセントの時間を使う
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