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日本のコロナ対策は本当に効果があったのか?...経済学で事後検証する

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月22日 10時50分

飲食業を中心に休業要請も行われた。休業すると、従業員を雇い続けることは困難である。そのため、雇用を維持するために雇用調整助成金(雇調金)や持続化給付金などの給付が政府から出された。

2020年には、一人一律10万円の特別定額給付金も支給された。さらには、事業者に対し運転資金等金融面での支援として、実質無利子で無担保でのゼロゼロ融資が行われた。これは、政府系金融機関だけでなく民間金融機関からも融資されたが、支援に要する支出は全て政府からなされた。こうした働き方の面や雇用面や金融面からのコロナ対策は、どの程度奏功したのだろうか。

新型コロナの感染者が急増する時期には、コロナ患者の受け入れ態勢の整備が急務となった。いわゆる「コロナ病床」をどう確保するかは、主たる責任として都道府県知事の腕にかかっていた。

わが国での医療提供体制に関する権限の多くが、コロナ前から、都道府県知事に与えられていたからでもある。ただ、財政面での支援は、国の財政から巨額の支出によって成り立っていた。

はたして、巨額の財政支援をしたお蔭で、求められるコロナ病床が十分に確保され、多くの命を救うことができたのか。それとも、財政支援はすれどもコロナ病床は不十分にしか確保されず、患者がたらいまわしにされるといったことが起きていたのか。その検証には、経済学に基づいて医療のあり方を分析する医療経済学の視点が欠かせない。

本特集では、こうしたコロナ禍での出来事に焦点を当てて、経済学的にコロナ対策の検証を試みる。

政府のコロナ対策に専門家からの意見を述べる有識者会議のメンバーに加わった大竹文雄(大阪大学特任教授)は、コロナ禍の政策決定に、経済学者がどう関わり、経済学の知見がどう役立てられたかについて論じている。

コロナ対策は、新型コロナの感染防止が最優先されるのだが、それによって失われるものがある。特に、経済的な利益は損なわれがちである。我々は、新型コロナから命が守られただけで生きていけるわけではなく、生計も成り立たせなければならない。

経済学者として、コロナ対策を議論する有識者会議の最前線に立ち、医学等だけでは解決できない経済学が導く解決策を説いた。コロナ対策をめぐる議論では、経済学以外の専門知と経済学の専門知とのトレードオフ(二律背反)にも多々直面した。その現場の緊張感が筆致から伝わってきて迫力がある。

次に、コロナ対策の各論として、経済学の各分野の専門家がコロナ禍を事後検証する。山本勲(慶應義塾大学教授)は、コロナ前から始まっていた働き方の変容が、コロナ禍を経てウェルビーイング(心身の健康・幸福)の格差として顕著に現れた点に注目する。在宅勤務が可能か否かや、AI(人工知能)などの新技術が職場で導入されたか否かなどが格差の要因となっている様が描写されている。

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