元CIA工作員が、かつての敵国ベトナムを訪問して新たに発見したこと
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月27日 8時0分
ベトナム人のガイドたちは職務に忠実に、おおむねバランスの取れた説明をしつつ、民主主義、人権、経済的機会、個人の主体性についても語った。「大学生になって初めて選挙に行くと、既に教授が学生全員の票を共産党の候補に投票していました」と、あるガイドは言った。「これがこの国の民主主義の現実です」
「(共産主義者たちは)とても『ハード』でした」。南部でガイドしてくれた人物はそう言うと、言葉を選ぶように一瞬沈黙した。「そう......とても強い姿勢で私たちに接したのです。長い間、私たちにはチャンスがありませんでした」
ベトナムの経済は好調に見えると私が指摘すると、このガイドは言った。「私たちの国では、ほかの途上国やアメリカと違って、物乞いの姿を見ることがありません。働かないベトナム人はいません。必ず道はある。もし職がなければ、自分で仕事をつくればいいのです」
しなやかで柔軟性のある「バンブー外交」
経済の好調ぶりはデータにも表れている。86年に始まった経済自由化政策「ドイモイ(刷新)」の下、今やベトナムはアジアで最も速いペースで中流層と富裕層が増加している国になった。国民1人当たりの所得はこの10年で8倍に増加。かつて戦火を交えたアメリカとの貿易額も、02年の30億ドルから1400億ドルへと飛躍的に増えている。過去5年間で対米輸出は230%増加、輸入は175%増加した。ベトナムの対米輸出の最大の品目は、経済大国となるための「登竜門」と言えるハイエンドの機械と工具だ。1人当たりのGDPは2004年以来、8倍になった。
もちろん、北の隣国である中国の存在感は無視できない。アメリカと中国の両方とうまくやっていくことが不可欠だ。
その点、ベトナムは米中両国と「包括的戦略パートナーシップ」を結ぶなどして、竹(バンブー)のようにしなやかで柔軟性のある「バンブー外交」を実践してきた。米中間の緊張が高まっている状況も自国経済の追い風にしている。18年にアメリカのトランプ政権が対中関税を引き上げて以降、ベトナムの対米輸出は大幅に増加した。
ベトナムの人口の半分は30歳以下だ。地下トンネルと戦争の歴史は遠い過去の記憶になりつつある。これからは、ベトナムの新しい世代の力によって、活力のある経済と自由な社会が築かれていくのだろう。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
「抑止力を高める=戦争に巻き込まれる」は間違っている…今こそ改めて学ぶべき「80年前の日本の失敗」
プレジデントオンライン / 2024年11月26日 8時15分
-
相次ぐサプライズ人事 次期トランプ政権の狙いは…【Bizスクエア】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月20日 6時0分
-
【逆説の日本史】日米両国に「シベリア出兵」を要請した英仏の二つの「思惑」
NEWSポストセブン / 2024年11月15日 11時15分
-
共産党書記長らがトランプ氏に祝電、経済への影響は限定的との見方(ベトナム、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月13日 11時0分
-
ベトナム最高指導者、トランプ氏と電話会談 経済関係強化を議論
ロイター / 2024年11月12日 12時50分
ランキング
-
1ウクライナ軍が米供与の「ATACMS」でロシア西部を攻撃 ロシア国防省が発表
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 10時12分
-
2メルケル前独首相、欧米協力訴え 中ロの脅威、トランプ氏にも懸念
共同通信 / 2024年11月27日 7時52分
-
3韓国の女子大で共学化に反発した学生が大暴れ、被害額は6億円に=韓国ネット「デモではなく暴動」
Record China / 2024年11月27日 9時0分
-
4ドイツ・メルケル前首相が回顧録「トランプ氏はロシア大統領に魅了されていた」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 11時32分
-
5ラオスで“メタノール入り酒”飲んだ外国人観光客6人死亡 宿泊施設オーナーら8人を拘束
日テレNEWS NNN / 2024年11月27日 12時38分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください