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日本とアメリカの現状否定票、その共通点と相違点

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月27日 14時30分

アメリカの場合は、こうした右からの不満の表明に加えて、民主党の左派(プログレッシブ)にも強い現状不満票が集まっています。例えば、民主党左派のバーニー・サンダース上院議員は、今回のハリス候補の落選を受けて「民主党が労働者を顧みなくなったことが、敗北を招いた」として現状を厳しく批判しました。また、同じく左派のアレクサンドリア・オカシオコルテス議員の支持者の中には、連邦下院は彼女に投票したのに、大統領はトランプに入れた若者も多かったといいます。

右と左に分裂し、また錯綜はしてはいるものの、アメリカの場合は現状不満といっても、既成政党全体への不満というところまでは行っておらず、二大政党制はとりあえず機能しています。深刻な対立は、それぞれの党内における左右対立にあるとも言えますが、その場合も対立の論点は比較的に可視化されています。一方で、日本の場合は本当にありとあらゆる既成政党に対して不信が向けられているわけで、これはアメリカとは不満の質が異なっていると思います。

日米の違いということでは、人口構成の違いという点もあります。アメリカの場合は、近年は少し出生率が下がっているものの、90年代から2010年代までは第3次ベービーブームとでも言うべき「毎年一歳刻みで300万人」という分厚い人口の層が存在しています。ミレニアルとか、X、Zと言われる世代は量的には上の世代に十分対抗できるのです。また、若者の雇用は不安定であるものの、DXやグローバリズムの浸透した実力社会を直視して、正しく戦えば少なくとも機会はある社会です。少なくとも世代によって富の偏在、機会の偏在があるというような世代間格差は顕著ではありません。

ですが、日本の場合は、若者と高齢者は全く異なる環境に生きています。偶然高度成長からバブルの時代に生きただけで、現代の若者とは比較にならない生涯賃金を得ている高齢層があり、しかも彼らは人口が巨大なので、若者の側は全く不利な戦いを強いられています。日本の場合は若い世代の現状不満のエネルギーは一旦火が付くと、深く静かに広がっていくかもしれません。

そもそも現状不満における「大義」に違いがあると思います。アメリカの場合は、国としてはグローバリズムに適応して全体が成長しています。付加価値の低い製造業は空洞化させて、その代わり本国は知的産業が中心となって巨大な付加価値を創造しています。そこには格差という副作用があり、またノスタルジックな昔のアメリカが失われたという感傷や、優秀なアジア系移民などへの反感もあります。ですが、全体の方向性は間違っていないので、不満というのは個別の問題なのです。トランプ派という特殊な運動に、そうした個別の不満が感情論を軸に結集しているだけです。

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