日本はトランプ政権に「身構える」よりも「見習う」べき
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月28日 11時5分
村上尚己
<トランプ氏の「関税引き上げ」表明に日本株市場も揺らいでいるが、影響を恐れている場合ではない。石破政権はベッセント次期財務長官を見習い、日本の経済成長を高める政策を徹底すべきだ>
2025年からのトランプ2.0始動を前に関税引き上げが確実視される中で、前倒しで在庫確保に企業が動くなど、米国の政策転換は企業活動に広範囲に影響を及ぼしつつある。11月26日(日本時間)には、トランプ次期大統領が中国やメキシコ・カナダに対する関税引き上げを行う考えを改めて示したことで、日本株市場が一時大きく下落した。
関税引き上げの企業への影響は様々だが、トランプ氏当選後の11月12日コラムで述べたように、米国国内に限れば、トランプ政権の経済政策は、関税引き上げのネガティブな影響、減税政策などのプラスの影響がほぼ相殺すると筆者は予想している。
この経済政策の指揮をとる財務長官にスコット・ベッセント氏が指名されることが、23日に報じられた。同氏は、マクロ系ヘッジファンドの創設者であり、またジョーズ・ソロス氏とともに1992年のポンド危機時にポンド売りトレードにも携わっていたとされている。
後述するように、アベノミクスの成功にも影響を受けており、2012年時の第2次安倍政権誕生の後で起きた金融市場の大きな変動に投資家の立場で直面していた。金融市場での経験だけでなく、マクロ経済政策についても造詣があり、トランプ氏は手堅い財務長官人事を行ったと言えるだろう。
安倍元首相の「3本の矢」に倣った「トランプ流の3本の矢」
同氏は、安倍晋三元首相が過去に提唱した「3本の矢」に倣う経済政策をトランプ氏に助言した、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。具体的には、規制緩和によるGDP成長率3%を実現しつつ、2028年までに財政赤字を国内総生産(GDP)比3%に削減、そして日量300万バレル相当の原油増産、である。
米国の経済成長率の推移と比較すると、3%の経済成長はかなり高い伸びであり、妥当性については議論が分かれるだろう。ただ、適切なマクロ安定化政策を行い、市場メカニズムを徹底するために規制緩和を進めることで、政府が経済成長率を高める方針を明示することは重要だ。
第一に高い経済成長を実現して、それが税収増をもたらすので、財政収支も持続可能性も高まる、というのがベッセント氏らの考えとみられる。そして経済全体の成長があって、エネルギーセクターなどの伝統的産業も復活できる。これが「トランプ流の3本の矢」なのだろう。
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