エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月28日 19時50分
ジョーダン・キング
<NUKEMAPシミュレーションで浮かび上がる惨状>
ロシアのウラージーミル・プーチン大統領の常套手段である「核の脅し」がこのところ急激に凄みを増し、世界中が危機感を募らせるなか、気になるのはロシアがアメリカの主要都市に核攻撃を加えたらどうなるかだ。
本誌はインターネット上に公開されたNUKEMAPを使って、被害規模をシミュレーションした。
プーチンは今年9月、核兵器使用の前提条件となる核ドクトリンを改定。「航空宇宙兵器の大規模な発射とそれらの国境越えに関する信頼に足る情報を入手したら、核兵器使用の可能性を検討する」と明言した。
ここで言う航空宇宙兵器とは「戦略・戦術爆撃機、巡航ミサイル、ドローン(無人機)、極超音速兵器」などで、「敵が通常兵器を使用して重大な脅威を及ぼす場合も含めて、ロシアは攻撃に対して、核兵器を使用する権利を有する」と、プーチンはドスを利かせた。
NUKEMAPは核兵器専門の科学史家であるスティーブンズ工科大学のアレックス・ウェラースタイン教授が開発したツールだ。
本誌はこれを用いてロシアがR-36M2を使用した場合の被害状況を調べた。R-36M2は史上最大・最強クラスの旧ソ連製の大陸間弾道ミサイル(ICBM)で、NATOではSS-18サタンのコードネームで知られる。最大射程は約1万6000キロ。10個の独立した核弾頭を搭載できるため、核攻撃の威力を最大限に高められるICBMの1つと考えられている。
爆発時に発生する超高温の火の玉に収まる範囲(中心部の黄色い円内)の面積は約39平方キロ。ここでは数百万度もの超高温の熱により、あらゆるものが一瞬にして蒸発する。それを取り巻く濃いグレーの内側の円内は広さ1145平方キロ程で、爆発の衝撃は中心部よりは弱まるが、高層住宅などの建物が倒壊し、大規模な火災が発生すると予想される。
外側の大きなオレンジ色の円内は熱放射が及ぶ範囲で、広さは約6110平方キロ。この範囲にいる人は全て、皮下組織まで及ぶ3度のやけどを負うリスクがある。このやけどでは神経も損傷するため、痛みを感じないことが多いが、深い傷跡が残り、切断手術が必要になって、手足が不自由になる場合もある。
一番外側の薄いグレーの円内は広さ約9040平方キロ。爆発時の損害は比較的軽微で済むが、窓ガラスが破損するなどして、負傷者が出るとみられる。
本誌はこれについて米国防総省とロシア国防省にメールでコメントを求めている。
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