エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月28日 19時50分
このシミュレーションでは、首都ワシントンなどアメリカの主要都市の上空で2万キロトンの核爆弾が爆発した場合の死傷者数を試算した。上空での爆発を想定したのは、核戦争などによる人類滅亡までの残り時間を示す「終末時計」を発表している「原子力科学者会報」が、都市に対する核攻撃では地上爆発型よりも空中爆発型が使われる確率が高いと述べているからだ。
■首都ワシントン
アメリカの首都が核攻撃を受けた場合、24時間どの時間帯であれ、核爆発の影響を受ける4つの円内全体に607万7683人がいて、うち163万8140人が爆発直後に死亡、202万9390人が負傷する。連邦議会議事堂や最高裁判所があるキャピトル・ヒルは、超高温の火の玉の範囲内にあるため、完全に消滅する。
■ニューヨーク
4つの円内には1625万858人がいて、爆発直後に推定545万8130人が死亡、560万1470人が負傷する。比較的軽微な損害が予想される圏内には、ニュージャージー州ニューブランズウィックやコネティカット州スタンフォードも含まれる。
■ロサンゼルス
4つの円内には平均して常時1209万2715人がいて、爆発直後におよそ275万8790人が死亡、436万9390人が負傷する。熱放射が及ぶ範囲には、近郊のサンタモニカやカラバサス、ロング・ビーチ、それにポモナの一部も含まれる。
ウクライナ戦争の長期化で、アメリカ主導のNATOとロシアの対立が深まるなか、このところ核戦争の可能性がにわかに現実味を帯び、議論が活発化している。
プーチンは11月19日、核兵器の使用基準を大幅に引き下げた改訂版の「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)を承認した。
「ロシア連邦及び(または)その同盟国に対する攻撃には、必然的に報復が伴う」ことを、核抑止により「潜在的な敵対勢力に理解させる」必要があることを強調する。
ウクライナは先週初めて、アメリカが供与したM39陸軍戦術ミサイル(ATACMS)をロシア領内に向けて発射した。来年1月に退任を控えるジョー・バイデン米大統領がこの長距離ミサイルをロシア領内への攻撃に使用することを許可したためだ。
バイデン政権は、ロシアが数千人もの北朝鮮兵士をクルスク州の前線に派遣したことについて、紛争の大幅な激化につながるとして警戒感を示していた。
ロシアの前大統領で、現在はロシア安全保障会議の副議長を務めるドミトリー・メドベージェフは11月26日、メッセージアプリのテレグラムに、アメリカはウクライナの首都「キーウに核兵器を移管した場合の影響を真剣に議論している」と投稿した。
本誌の問い合わせに対して、米政府は「ウクライナを核武装させる考えはない」と述べ、これをきっぱりと否定した。
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