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布製マスクの「製造過程」になぜメスを入れたのか?...田中弥生・会計検査院長に聞く「コロナ対策の事後検証」

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月18日 10時50分

持続化給付金事業について

土居 2020年度に、新型コロナ対策で会計検査院が重点的に取り組んだ項目は他にありますか?

田中 いわゆる新型コロナ対策関連経費の中で、1つ挙げるとすれば持続化給付金事業です。

持続化給付金は423万件に対して計5兆5500億円が給付されましたが(2021年3月末まで)、背後では多層の再委託が行われています。

受託者である一般社団法人サービスデザイン推進協議会から大手広告代理店・電通などに99.8%再委託し、そこから更に9階層に及んで延べ723者が関与していました。

このような多重階層では受託者が管理するのは困難であるとして、再委託の範囲や仕事の適切性を明確にすべきだと申し上げました。

土居 その後、2021年度や2022年度にも補正予算を通じて作られた基金でも同様のケースが見られました。持続化給付金事業ほどではないにせよ、基金の運営における再委託の問題がまだ残っているように思います。

田中 2023年秋に「令和4年度(2022年度)決算検査報告(注4)」を公表し、「特定検査状況」として報告したガソリン価格を安定させるための燃料油価格激変緩和対策事業ですね。

6兆2000億円の予算が組まれ、一般社団法人全国石油協会が、基金設置法人として選ばれました。そして、同協会と博報堂との間で委託契約が結ばれ、受託者である博報堂を通じて別の大手広告代理店に77.0%再委託していました。

委託の内容ですが、主に補助金申請の処理とガソリンの販売価格の調査です。ガソリンは卸売事業者(石油輸入業者)が30社しかありませんが、ガソリンスタンドは全国に約2万8500店あります(検査当時)。ですから、ガソリンの価格や売上に基づいて卸売事業者に交付する補助金を調整し、頻繁に補助金の申請を行う必要がありました。また、ガソリンの販売価格の調査を全ガソリンスタンドに対して行なうことになっていました。

土居 一回一回の申請ごとに交付事務が必要という構図ですよね。持続化給付金事業の場合は100万円から200万円規模の給付金が423万者に交付されました。再委託に関して所管省庁のモニタリングの甘さがあったのではないでしょうか。

田中 それには、霞が関の体力不足も影響しています。実はGoToキャンペーン事業では、イート事業を実施する農林水産省が144件のすべての契約事務を自力で行おうとしました。GoToEatキャンペーン準備室に配置された職員を9人から最大20人に増員して対応しましたが、検査時点で半分以上にあたる85件の契約事務が完了していませんでした。

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