日本の総選挙とアメリカ大統領選、太平洋を挟んだ2つの国の「小さな正義」を考える
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月29日 15時53分
「小さな正義」は世の中を変える原動力になる
これまで、正義を定義づけることなく「正義」という言葉を使い続けた。
正義も多様で且つ多元的だが、ここでは消極的定義を挙げておきたい。つまり、「正義とは何でないか」を問題にしたい。
まず、当たり前のことだが、正義とは力ではない。例え力によって支えられることがあったとしても、力とは異なる。それが出発点だ。
次に、そのことの必然的結果でもあるが、正義は多数決では決められない。いろんな場所でいろんな人が言い古したことだが、「数は力なり」という力の論理に屈したりはしない。
逆に、マイノリティーの人権は守られるべきだが、同調もしない。人としての尊厳は認められるべきだが、それが人に特権を与えるものであってはならない。正義は特権を憎む。
正義は型にはめにくい。それは単なる感情ではないが、直感を排除しない。科学や文明は現代人に多くの便益をもたらしてくれたが、同時に多くのものを奪いとってしまった。その奪いとられたもののうち際たるものが私たちの直観力だ。CPUもAIも人の直観力には届かない。
正義は様々な在り方をする。正義の人、正義の理念、正義の達成、正義の大小、等々。いかに小さな正義であっても、それは力以上に世の中を動かすことがある。それは古臭く漠然とした理念ではなく、今現在、そして将来この世の中を変え切り開く原動力になる余地がある。
わが国の総選挙もアメリカの大統領選挙も、そして兵庫県知事選挙も単なる力の争奪戦として終わらせてはいけない。
*
筆者は第一東京弁護士会所属の弁護士。大分県生まれ、一橋大学経済学部卒。1978年弁護士登録。日弁連副会長、関東弁護士会連合会理事長、第一東京弁護士会会長などを歴任。
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