2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月5日 16時52分
「僕とアンナにはたくさんの計画があった。みんなでヨーロッパに行けるよう車を買いたい。2人で子供の成長を見守りたい。待っていてくれる家族のことだけを考えて生きていた」
開戦以降、今年8月下旬までにウクライナとロシアは55回の捕虜交換をして、3500人以上の兵士が帰国を果たした。しかし、ウクライナメディア「スラバ・ディロ」によるとアゾフ兵士についてはわずか7回で、約1100人の捕虜のうち帰国できたのは201人だった。
ウクライナの独立記念日である8月24日には115人の兵士が帰国したが、アゾフ兵士は一人も含まれなかった。ゼレンスキーは記者会見でこう語った。「さまざまな理由からアゾフ兵士の帰還には困難が伴う。そのため私は家族や関連の政府機関、国際機関と協力して取り組む」
秋を迎えた9月2週目の金曜日、22番監房のキリルに看守が声をかけた。「荷物を持って出ろ」
部屋が変わると思って通路に出たキリルは、そのまま警察の護送車に乗せられた。そして、他の3人の捕虜たちと同様に目隠しをされた。どこへ行くのか、一切説明はなかった。
10時間ほどで着いた刑務所で目隠しを外された。職員たちが「軍の空港」「書類の引き渡し」というようなことを話していた。キリルたちは「もしかして......」と期待に胸をふくらませつつ、素知らぬふりをした。
その後、高速道路を一気に駆け抜け、軍用機に乗せられたのが9月14日の早朝。徐々に同行する捕虜が増え、到着した空港でバスに乗り合わせた時には100人ほどになっていた。そこで初めて解放されることを告げられた。キリルはなぜ自分が対象になったのか、今でも分からない。
捕虜交換が実施されたのはベラルーシのホメリだった。そこで、ロシア人捕虜103人とウクライナ人捕虜103人が交換された。8月6日に始まったクルスクへの越境攻撃で、ウクライナ軍は600人ほどのロシア兵を捕虜にしていた。
ゼレンスキーは「捕虜を解放する上で、クルスク作戦が最大級の貢献をしている」と評価した。戦闘に参加した兵士によると、捕虜1人当たり4000ドルの賞金が懸けられていたという。
ベラルーシからウクライナに入ったところにある国境検問所で政府の関係者や看護師が待っていた。キリルはその時のことを振り返る。「若い女性の看護師が『お帰りなさい!』と言って、バスから降りる僕たちを笑顔で迎えてくれた。そのとき本当に帰ってこられたんだと実感した」
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