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税金が「何に使われたのか」という国民の声は大きくなっている...田中弥生・会計検査院長が掲げた「5つの目標」とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月18日 11時5分

2つ目は、制度やその運営方法の改善に資するような検査報告を作ることです。3つ目は検査の質を向上させることです。

会計検査院は重箱の隅をつつくような細かい指摘をするとよく言われてきました。それを超えて、1点の検査から他地域や全国へと検査を広げ、制度改正に寄与するような提言を行ないたいと考えています。これを「点から線へ、線から面への検査」と我々は言っています。

そのためにはデータ分析や統計解析を活用し、AIなどを使ってリスクを察知する新しい手法も検討しています。こうした取り組みを支援するために、3年前に検査支援室(デジタル技術を活用して、新しい検査手法の開発、業務の合理化等を行なう部署)を設立しました。

土居 先ほどうかがった持続化給付金の申告状況の検査は、国税庁のデータを活用して成果を上げていることが一部で話題になりました。

田中 持続化給付金の収入は課税対象となります。中小企業庁と国税庁のデータからサンプリングして、課税対象となる収入として適切に申告されているかを会計検査院で確認しました。その結果、少なく見積もっても5%弱のケースで適切に申告されていないことが判明しました。

土居 今までにない画期的な所見だと思います。つまり、省庁をまたぐ組織横断的なデータのやり取りを霞が関はそもそもやりたがらないし、これまでやってきませんでした。

お互いが相互不可侵でデータの融通をしてこなかったのが、会計検査院の力でその垣根を取り払う1つの突破口になりました。

田中 制度上は省庁間で照会をかけることが可能ですが、より積極的に活用されるようになってくれればいいと思っています。

法人や個人事業者の受給額は100万円や200万円単位の話で、一個一個は小さく見えるかもしれない。しかし、トータルで見ると5兆5000億円(2020年度)にものぼります。ただし、件数が多い故に実地検査よりも、データ分析を活用するほうが適していると思っています。

土居 データを活用することは重要ですね。それでは、残りの4つ目と5つ目の目標とは何でしょうか?

田中 4つ目の目標は、国民目線で我々の社会的認知度を上げることです。会計検査院は憲法機関として国民のために活動していますが、業務の性質上、その対象が行政機関の改善にとどまり、仕事内容が国民の皆さんに伝わりづらくもあります。

検査報告が国会に提出されても国民の皆さんやメディアが注目しない限り、国会議員の方々の関心は必ずしも高まりません。ですから社会を変える力になるために世論を味方につけて国民目線で認知度を上げるということを目標に掲げました。

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