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宇宙ごみ対策に「日本発・木工技術」で挑む...超小型衛星「リグノサット」の可能性とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月5日 17時47分

リグノサットの模型を手にした土井。増え続ける人工衛星が残していくごみが緊急の課題に IRENE WANGーREUTERS

トム・ハワース(自然・科学担当)
<日本発の「環境に優しい」衛星プロジェクト。地球も宇宙もエコでサステナブルに開発していく時代に>

持続可能な宇宙開発を目指し、世界初の木造人工衛星が宇宙に飛び立った。11月初めに米フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースXの無人ロケットで打ち上げられた「LignoSat(リグノサット)」は、間もなく国際宇宙ステーション(ISS)から宇宙空間に放出される。

一辺わずか10センチの立方体の超小型衛星は、外装パネルに主にホオノキ(マグノリア)材を用い、接着剤やネジを使わない日本の伝統的な木工技法で組み立てられている。

京都大学の科学者を中心とするプロジェクトは、宇宙の重大な環境問題に取り組んでいる。従来の人工衛星の寿命は5年ほど。最後に燃え尽きる際に発生する宇宙ごみの影響が深刻化している。

「宇宙空間へのアクセス、探査、利用を続けるなら取り組まなければならない課題だ。素材を変えてある程度は改善できるかもしれないが、超高層大気をごみ箱にしていることの根本的な解決にはならない」と、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)物理・天文学部のアーロン・ボリー准教授は本誌に語る。

従来の人工衛星は大気圏に再突入する際に燃え尽き、そのとき放出する金属粒子がオゾン層を破壊する恐れがある。昨年の研究でこれらの粒子、特に酸化アルミニウムが、無視できない環境リスクをもたらすことが分かった。

「金属製ではない衛星が主流になるべきだ」と、宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館特定教授の土井隆雄は5月の記者会見で述べている。

NASAのメーガン・エベレットISSプログラム副チーフサイエンティストも次のように語る。

「宇宙で木が使えるのかと思う人もいるだろうが、今回の調査で、木造の衛星が従来の衛星より環境に優しく持続可能であることを証明できるのではないかと、研究者たちは期待している」

万能の解決策ではない

地球を周回する人工衛星の数は指数関数的に増え続けている。衛星追跡サイトのオービティング・ナウによると、稼働中・非稼働を合わせて現在約1万1000基が地球を周回している。今後10年間で10万基を超える見込みだ。

宇宙産業の大手開発者は大規模な衛星群の展開を計画している。スペースXの衛星通信網スターリンクだけでも約3万5000基を打ち上げる予定で、アマゾン、ワンウェブ、中国空間技術研究院も野心的な計画を立てている。

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