わが友人、ホームレス、テントに暮らす荒川の釣り名人。奇跡が起きることを祈っている
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月11日 21時0分
文・写真:趙海成
<荒川河川敷のホームレスを取材する在日中国人ジャーナリストの趙海成氏が初めて出会ったホームレスは、「伝説」のように生きる桂さん(仮名)。食事を共にし、親交が深かったが、事態は急変する>
※ルポ第14話:突然姿を消した荒川ホームレスの男性 何が起こったのか、残された「兄弟」は... より続く
2024年6月、足立区にあるコンビニの前で一人のホームレスが突然倒れ、心臓が止まった。
救急車で大きな病院の救急病棟に運ばれ、急性心筋梗塞と診断された。すぐに手術を受けた。呼吸が出来て、心臓も動いていたが、意識は回復しなかった。
脳波検査では、彼の脳はすでに機能しなくなっており、思考、運動、感覚、言語、感情などの機能はすべて失われていることが確認されたという。
しかし脳幹は生きているため、生命を維持し、循環、呼吸、体温などの生理機能を含む役割を果たすことができる。正確に言うと、彼は植物人間になったのだ。
これは私の親しい友人である桂さん(仮名)の話である。
筆者(左)と桂さん
ついこの間までパーティーの約束をして元気だったのに...
その1週間前には、外で羊肉のしゃぶしゃぶパーティーを開こうと約束したばかりだった。そのために私は、友人からもらった専用の炭火大火鍋を、前もって彼のところに届けたのだが......。
今はただ彼の身に起きたことを残念だと思いながら、「人生難測、世事無常」(「人生は予測不可能であり、世間は無常である」という意味の中国語)と嘆くしかない。
桂さんは私が最初に出会った荒川河川敷のホームレスだ。
彼と知り合って間もなく、私はフリージャーナリスト兼カメラマンであること、そして日本のホームレスの生活に興味があり、彼らに関する物語を書き、国内外の多くの読者に紹介したいということを伝えた。
桂さんの信頼を得るために、私は彼に日本で出版された著書『私たちはこうしてゼロから挑戦した』(アルファベータブックス)を贈った。その後、彼はわざわざ私に感想を話してくれた。
そうした信頼関係により、私が取材をするたびに、彼はとても親切にいろいろな質問にひとつひとつ答えてくれた。それだけでなく、私が彼の普段の生活ぶりを写真に撮っても、決して忌み嫌うことはなかった。
私が2年半の間に8万字に及ぶ「荒川河川敷の『原住民』」のルポシリーズを完成させることができたのは、桂さんの絶大な支援のおかげだ。
そこで今回は、桂さんへの感謝の気持ちを込めて、この記事を読者の皆さんにお届けしたい。そして、今も病床に横たわっている桂さんの身に奇跡が起こることを祈る。
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