江戸時代の「ブランディング」の天才! 破天荒な蔦重の意外と堅実なビジネス感覚
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月6日 11時10分
1783(天明3)年に蔦重は、日本橋通油町(とおりあぶらちょう)に新たな店を出しました。江戸の中心地でさらなる流行を発信していったわけですが、松平定信が老中首座となり、寛政の改革が始まると、倹約政策とともに風紀の取り締まりが行われ、状況が一変します。武士たちに学問が奨励されたことで、狂歌や戯作の武士作家たちは、遊びの世界から手を引いていくのです。見せしめのように、蔦重と組んで戯作を書いた山東京伝が手鎖50日に処され、蔦重も身上半減(財産の半分を没収)にさせられました。
そもそも江戸の本は、漢学や医学などの学問や和歌・漢詩などの古典に関わる「書物」と、錦絵や草双紙などの戯作である「草紙(そうし)」に分けられます。蔦重が主に出版してきたものは後者の「草紙」であり、こうした商品を扱う本屋を地本草紙問屋(どいや)といいます。反対に前者の「書物」を扱うのが書物問屋です。寛政の改革によって、学問ブームが到来すると、「書物」の需要が高まり、「草紙」は不況のあおりを食いました。そこで蔦重は書物問屋の株を取得し、「書物」の出版に乗り出すなど、再起を図ります。
蔦重は時代の流れを読み、流行をいち早く察知して自分から仕掛けていく名プロデューサーという一面と、他方では定期刊行物など手堅い事業を堅実に行って、きちんと経営基盤を安定させるという堅実なビジネスパーソンという一面が、うまくバランスが取れた経営者だったと思います。
鈴木俊幸(すずき・としゆき)
1956年、北海道生まれ。中央大学文学部教授。専攻は書籍文化史、近世後期の戯作・狂歌など文芸を主に研究。主な著書に『新版 蔦屋重三郎』『近世読者とそのゆくえ 読書と書籍流通の近世・近代』(いずれも平凡社)、『書籍文化史料論』(勉誠出版)などがある。
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