トランプは「冷戦2.0」に勝てるのか?外交での3つの選択肢
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月18日 16時31分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)
<トランプは冷戦2.0を制する能力と気質を備えているだろうか。最終的に冷戦2.0に勝つための、冷戦1.0から得られる教訓とは?>
ドナルド・トランプの米大統領就任を前に不安の声が上がっている。
中国が「冷戦2.0」を仕掛けながら武力衝突への備えを進めるなか、トランプは実利優先の現実主義者として多少の人民元と引き換えに台湾、ひいては東アジアの安定を売り渡すのではないか。
商業的利益にあらがえず、中国製品に60%以上の関税を課す計画を撤回するのでは?
トランプのMAGA(アメリカを再び偉大な国に)計画は単に自己中心的で孤立主義的なものなのか──。
トランプが重要ポストに指名した顔触れからは、これらの問いへの答えがノーであることが強く示唆される。
国家安全保障問題担当の大統領補佐官、CIA長官、国防長官、国連大使、国土安全保障長官、米通商代表部代表......。いずれの候補も対中タカ派で、トランプの「力による平和」を支持している。
この理念は近代アメリカで最も効果的な非孤立主義かつタカ派の大統領で、冷戦1.0を西側の勝利へと導いたロナルド・レーガンから受け継がれたものだ。
ただし、最終的に冷戦に勝つためには強硬姿勢に加え、目先の利益に惑わされない資質を備えた指導者が必要だ。冷戦1.0から得られる教訓とは?
トランプ株式会社は冷戦2.0を制する能力と気質を備えているだろうか。
外交での3つの選択肢
1950年までに東欧ではソ連の支配圏が確立され、東アジアでは北朝鮮と中国で共産主義独裁者が権力を掌握していた。
一方、西側の政治家には反共産主義のタカ派が多数存在し、明確なビジョンと戦略とロードマップを提示できる偉大な人材も台頭した。
その代表格のジョン・フォスター・ダレスはトルーマン政権下の51年、国務長官顧問として日米安全保障条約による日米同盟の確立と、サンフランシスコ講和条約による太平洋戦争の正式な終結を主導した。
朝鮮戦争終盤にはアイゼンハワー政権の国務長官として共産主義の「封じ込め政策」に携わった。
具体的には西太平洋の島々に軍事基地を設置し、台湾をその中核とする「列島線」構想に加えて、第1列島線上の人口の多い国々の経済発展を支援した。
この戦略は長期的に効果的で、支援された国々は今もアメリカの友好国だ。
だがトランプは当時の戦略を単純に再利用することはできない。
歳月を経て、弱点が目立つためだ。
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