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大量の子ガメが車に轢かれ、人間も不眠症や鬱病に...知られざる「光害(ひかりがい)」の影響とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月19日 14時2分

星空保護区を認定するのは、1988年に天文学者や環境学者らが設立した米アリゾナ州に拠点を置くNPO「ダークスカイ・インターナショナル(DarkSky International)」。光害対策にいち早く取り組んできた団体で、24カ国に80以上の支部があり、日本支部は越智が代表を務める。

団体によるダークスカイ運動は「責任ある屋外照明の推進」を掲げる。認定基準にも、屋外照明の上空への光漏れが「ほぼ0%」であることや、照明の色温度が「3000K(ケルビン)以下」といった厳しい条件が示されている。

ケルビンは、光の色温度を科学的な数値で表す単位だ。炎の色温度に似ていて、赤みのある暖色系の色合いが低く、青白い寒色系のものほど高くなる。基準の3000K以下となると、現在主流の白光のLEDは3500〜5000Kほどになるので、ほぼ基準外の数値に当たる。

日本でも街灯をはじめ、道路灯や防犯灯、信号機などのLED照明への切り替えは着実に進んでいる。ただし省エネや長寿命、環境対策の側面が強調される一方で、昼間のような白光が星の見え方のほか、人間や生態系に与えるデメリットについてはあまり語られてこなかった。

神津島村は、こうした条件に合う照明の開発を岩崎電気(本社・東京都中央区)に依頼。同社は照明を取り付ける角度を従来の斜めではなく、水平に改良して光の拡散を防ぎ、色温度も2700Kと基準内に抑えた屋外灯を製作した。

付け替え後は、路面の明るさを維持しながらも、四方に反射していた光がすっきり抑えられた。

神津島村、街灯を見直す前の様子 COURTESY OF KOZUSHIMA TOURISM ASSOCIATION

街灯の明るさを見直した東京都神津島村。観光と環境配慮の両立を目指す COURTESY OF KOZUSHIMA TOURISM ASSOCIATION

光害については、フランスやスロベニアなどで既に夜間照明を綿密に規制する法制度が整備されている。しかし日本は「環境省のガイドラインはあるが強制力はなく、JIS基準でもまだ光害の観点は十分整理されていない状況」と、越智は語る。

光害の認知を高めることが対策の第一歩だが、星空保護区は興味関心を引きやすく、日本の光害対策を加速させる可能性を秘めている。

現在、国内の星空保護区は神津島村のほか、沖縄県石垣市・竹富町の西表石垣国立公園、岡山県井原市の美星町、福井県大野市の南六呂師エリアと計4カ所ある。

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