2024年、ウクライナの戦況はどう変わったか──ロシアは支配地域を拡大、ウクライナはクルスクの死守が至上命題に
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月24日 19時8分
「2024年のウクライナ軍の大規模攻撃はクルスク州への越境攻撃で、比較的短期間に1200平方キロを掌握した。だが今では当初の占領地域の半分以上を失っている」と、フィンランドの情報分析集団ブラック・バード・グープの軍事アナリストであるエミール・カステヘルミは本誌に話した。
ウクライナ領内で最も大きく前線が動いたのは、ドネツク州の中部と南部だ。ロシア軍は激しい攻防戦の末、2月に同州の工業都市アウディーイウカを陥落させると、以後は着実に支配地域を広げた。
「6、7月頃から、この流れが顕著になり、ロシアが毎月のように支配地域を拡大するようになった」と、カステヘルミは言う。「ウクライナ軍は11月に最も多くの陣地を失った。12月には多少ましな状況になる見込みだ」
12月半ばにはロシア軍はドネツク州の要衝ポクロフスクまで数キロの地点まで迫った。プーチンはドネツク州全域の制圧を狙っているが、そのためにはポクロフスクの陥落が鍵を握る。
米シンクタンク・戦争研究所(ISW)によると、ロシアが支配下に置いたとみられるルハンシク州の支配地域は州境を越えて、ハルキウ州クピャンスクの南とドネツク州バフムートの西にまで及んでいる。
「だがルハンシク、ハルキウ両州におけるロシアの進軍は戦況をさほど大きく変えなかった。最も重要なのはドネツク州における戦闘だ」と、カステヘルミは言う。
ロシア軍はドネツク州における夏の攻勢に加え、その北のハルキウ州にも再び軍を進め、南のザポリージャとヘルソン両州でも攻撃を仕掛けた。
ISWによると、ザポリージャ州でロシア軍が制圧したと主張している地域と、制圧が確認された地域はわずかしか拡大しておらず、とりわけマラトクマチカの南とマリウポリの北では、ウクライナ軍が孤立状態に追い込まれた地点は減っている。
「全体的に見ると、2024年は2023年より大きく戦況が動いたが、大半は8月から12月までの動きで、年の前半はおおむね膠着状態にあった」と、カステヘルミは総括する。
シカゴ大学ハリス公共政策大学院の教授で、反プーチンで知られるロシア生まれの政治経済学者コンスタンティン・ソニンによると、2023年末から2024年の初め頃までにロシアは、地上部隊を投入する前に、目標とする地域全体を空爆で徹底的にたたく戦法を取り始めたという。
「そのため2024年には徐々に進むロシア部隊が、瓦礫の山と化した地域を占領することになった」と、ソニンは本誌に語った。「機動戦は全く行われず、ただただ破壊あるのみだ」
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