アサド政権崩壊後の混迷シリアを待つ「3つのシナリオ」を検証する
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月24日 19時24分
シリア第3の規模の勢力で、主にイスラエル国境近くの南部に住む。一部のドルーズ派指導者はイスラエルに併合されることを望んでいるともいわれるが、イスラエル占領下のゴラン高原では、同地域のシリア返還を求めている指導者もいる。
イスラエルはゴラン高原の入植地拡大計画を承認したばかりで、イスラエル軍はここ数日、国境の非武装緩衝地帯を越えて前進している。
4つ目は、シーア派の分派アラウィ派と、キリスト教徒。彼らはアサド政権崩壊後、最も弱い立場に置かれている少数民族で、彼らに関心を寄せたり、保護する力を持つ近隣国の味方もいなければ地元勢力の仲間もいない。
連邦制統治に割れる賛否
現在の国内力学と、より広範な地域の地政学を分析することで、シリアの未来には3つのシナリオが考えられる。
1つ目のシナリオは、世俗的な連邦国家が形成されることだ。
これは、シリアを構成する多様な民族と宗教に対応したもので、連邦制により、全てのグループが地方と中央の両方のレベルで代表権を持つことが可能になる。既に事実上の自治を享受しているクルド人などの少数民族は、この案を支持している。
HTSは、新生シリアにおけるクルド人の役割について公式のコメントは出していない。ジャウラニは、「次のシリアでは、クルド人は重要な存在となる。私たちは共存し、誰もが法によって権利を与えられるだろう」とだけ述べた。
連邦制モデルに対する周辺諸国の意見は割れている。イスラエルは連邦制を支持している。
同国のギデオン・サール外相は、シリア全土を実効支配し、主権を持つ単一のシリア国家は「非現実的」とし、「論理的なのは、シリアの多様な少数民族の自治を目指すことであり、連邦制が望ましいかもしれない」と述べた。
一方、ヨルダンやトルコは、連邦制には反対している。トルコのクルド人に代表されるような自国の少数民族に与える影響を懸念しているためだ。
紛争長期化で利する国
混乱に乗じて イスラエルはアサド政権の崩壊を受け、占領するゴラン高原を含むシリア領内での軍の展開を活発化させている JAMAL AWADーREUTERS
2つ目のシナリオは、強力な中央集権国家だ。この場合、HTSのようなスンニ派イスラム主義勢力が主導する中央政府が基盤となる。権威主義的な統治が行われ、少数民族は抑圧され、イスラム法の役割が増大する可能性がある。
トルコはこのシナリオを強く支持している。シリア北部の一部を支配するクルド人民兵組織「人民防衛隊(YPG)」の脅威を排除できるとみているからだ。トルコは、YPGと自国内の分離主義組織「クルド労働者党(PKK)」の関係を警戒している。
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