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睡眠不足の上司は部下に当たり散らし、心を落ち着かせている...「仕事と睡眠」の驚きの関係

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月26日 6時40分

リーダーの睡眠不足の代償を、メンバーが払っていたのです。

別の調査では、リーダーがメンバーに当たると、一時的にリーダーの心が安らぐという結果も出ています。

リーダーとして、きちんと振る舞うにはそれなりに自制心を利かす必要があります。でも、メンバーに当たり散らすとき、この自制心がはずれます。だから、エネルギーの節約になり心が休まるのです。

もちろん、このような安らぎが健全なわけがありません。実際、この安らぎは一時的な効果しかありませんでした。メンバーに当たっていたリーダーは、1週間後、逆にストレスが増え、やる気も落ちていたのです。

この現象は、まるでドラッグの効用とそっくりです。ドラッグもメンバーに当たる言動も、一時的に安らぎを得られるものの、長期的にみればその人自身を苦しめます。メンバーも、もちろん不幸です。

睡眠時間上位の企業は利益率も高い

ほかにも、睡眠不足の翌日は、従業員は不正行為に走りやすいという結果が出ています。

睡眠時間が7時間未満だった看護師は、個人情報などの機密情報を漏らしたり、アルコールなどを仕事中に摂取したり、仕事をさぼったり、誰かに悪口を言ったりする頻度が高くなっていました。

人は、睡眠不足だと、不正に手を染めやすいのです。

睡眠がこれほど重要であるならば、社員がよく眠れている企業は、実際、業績も高くなるのでしょうか。この問いに答えたのが慶應義塾大学の山本勲教授の調査です。

よく眠れている社員が多い企業ほど、その後、利益率が上昇していたことがわかりました。日本のビジネスパーソン1万人への調査と上場企業700社への大規模調査を組み合わせて得られた分析結果です。

この分析によれば、睡眠時間が上位20%の企業は下位20%の企業よりも利益率が1.8~2.0%程度高かったのです。利益率を1%改善するのにどれだけ企業努力が必要かを考えれば、睡眠の効果ははかり知れません。

そう、「果報は寝て待て」だったのです。睡眠をしっかりとることは、リーダー自身の健康のためだけに重要なわけではありません。メンバーの健康と仕事のパフォーマンスを高め、企業に貢献する重要な要素です。

『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』
 若杉忠弘 著
 かんき出版

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若杉忠弘
グロービス経営大学院教授(リーダーシップ・組織開発など)。東京大学工学部・大学院を経て、外資系コンサルティングファームBooz Allen Hamilton(現PwCコンサルティング)に入社。経営コンサルタントとして活躍。企業の経営戦略策定、組織開発、変革実行支援に従事。

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