日本のSDGsは「動いていない」...蟹江憲史教授の苛立ちと、未来に向けたボトムアップの取り組み
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月28日 8時10分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)
<衆院選の争点にもならず、日本のSDGsは停滞しているように見える。政治に対する働きかけも積極的に行ってきた蟹江憲史・慶應義塾大学大学院教授だが、現状をどう捉えているのか>
トランプ2.0が始まれば、世界の気候変動対策に暗雲が立ち込めるかもしれない。
しかし、それは「日本にとってチャンスでもある」と、11月に行ったインタビューで、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授は語った(インタビュー前編はこちら)。
翻って、日本国内の状況はどうか。
環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)の対策は進展していないようにも見えるが、一方で、企業や自治体の動きは活発だ。「市民に近いところで、分散的に対策を取っていき、相互に学び合いながら、ネットワークを作っていく」と、蟹江さんはそこに光明を見出している。
ニューズウィーク日本版では2023年に、「日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく――」という考えのもと、「SDGsアワード」を立ち上げた。2023年、そして2024年と、蟹江さんには本アワードの外部審査員を務めていただいている。
インタビューを、前後編に分けて掲載する(この記事は後編)。
※インタビュー前編:トランプ「反・気候変動」時代到来で思い出すべき、京都議定書での日本の過ち──蟹江憲史教授
――10月末に、政府の持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議(第19回会合)が開催された。蟹江さんも参加されているが、そこでの議論はどうだった?
蟹江 今回、メンバーが大きく変わった。新しく広がりを持ったという意味ではよかったが、仕組みとしてはまったく変わっていない。会議はあっても、残念ながら(物事は)動いていない。SDGsは石破政権のアジェンダに入っておらず、施政方針演説でも何も触れられなかった。
ボトムアップでのSDGsの実践に力を入れている慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授(2023年撮影) Photo:遠藤 宏
――10月の衆院選でも、SDGsや環境問題はまったく選挙の争点になっていなかった。
蟹江 ならなかった。ちょうど先日、ある政治家に「どうなんですか」と聞いたら、日本政治において進展はありません、世間の関心が「年収の壁」とか政治改革に集まっていて、長期的な持続可能性には関心が集まっていない状況です、と言っていた。
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