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元日のニューオーリンズで「トラックが群衆に突っ込むテロ攻撃」再浮上するIS思想の影

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月6日 16時6分

捜査はまだ初期段階だが、ISの指導部から指示された形跡はなく、ISのイデオロギーに共鳴したジャバールが単独で計画を実行したと考えられる。こうしたテロの脅威は分散化しており、予測するのは不可能に近い。

主戦場はデジタル空間

2014~15年に絶頂期だったISはシリアとイラクでかなり広い地域を支配していた。物理的なカリフ国は、アメリカ主導の有志連合によって19年までに解体された。それでもなおISは自ら襲撃事件を起こしたり、今回のようにけしかけるという形で活動を続けている。

カリフ国の崩壊後は、ISのプロパガンダに触発されながらも直接的な命令や支援を受けないローンウルフ型の襲撃が目立つようになってきた。ISは個人をそそのかして恐怖と不安定な雰囲気を生み出し、それによって世界的な影響力を誇示している。

主戦場はデジタル空間だ。巧みな動画で欧米諸国の個人を取り込み、暴力的なメッセージを広め、戦術面の指導もする。そうやって彼らは、中東地域で物理的に敗退したにもかかわらず、世界中で驚異的な存在感を保っている。

今回のような事件は以前にも欧米諸国で散見された。16年のフランス南部ニースでの群衆へのトラック突入、同年の独ベルリンのクリスマス・マーケットへの大型トラック突入、17年の英ロンドン橋での襲撃事件など、いずれもISの呼びかけに呼応した個人が自動車や刃物、銃などの簡単に使える手段で多数の死傷者を出してきた。

こういうテロの形態は低コストであるばかりか、捜査機関に察知されるリスクが少ない。大規模で組織的なテロ計画と違って、長期にわたる準備を必要としないからだ。

ISはプロパガンダを広めるためにネット上のプラットフォームを活用している。主要なSNSの運営会社が過激派コンテンツの削除に多大な努力を払った後でも、ISや国際テロ組織アルカイダなどは暗号化されたメッセージング・サービスやダークウェブのフォーラム、小規模なプラットフォームなどに移行して対応している。

そういうデジタル空間で過激なコンテンツを拡散させ、暴力行為を呼びかけ、支持者の間に世界的な共同体意識を形成する。そんなルートで、ジャバールも過激化していったらしい。押収した携帯電話やパソコンを調べれば、その実態が明らかになるはずだ。

ネット上のプロパガンダで、彼らは宗教的なメッセージに自己啓発や殉教願望の物語を織り交ぜる。ISのプロパガンダは欧米社会で居場所のない個人に目的意識を与え、暴力を精神の充足や抑圧に対する抵抗の形として位置付けることに成功している。

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