2500年前の「薬用粘土」が腸内環境を改善する可能性【最新研究】
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月12日 8時40分
アリストス・ジョージャウ(科学担当)
<さまざまな病気の治療に使用されてきた「レムノス土」の現代医療への示唆は?>
2500年以上前に使用されていた古代の薬用クレイ(粘土)が、腸の健康を改善する可能性があることが最新研究で明らかになった。
この粘土(クレイ)は「レムノス土(Lemnian Earth:LE)」として知られ、古くから治療目的で使用されてきた。ギリシャのレムノス島産のこの粘土は粒状や錠剤の形に加工されて摂取されたり、粉末にしてワインやハーブと混ぜて一緒に飲まれてきた。
紀元前5世紀から19世紀後半までの医学文献には、さまざまな病気の治療に使用されていたことが記されているように、レムノス土は解毒剤、また疫病予防や腸の治療に用いられるなど、2000年以上にわたって薬として利用されてきた記録がある。
このように長い歴史の中で使用されてきたにもかかわらず、この一見、普通の粘土であるレムノス土がどのような治療効果を発揮していたかについては、まだ十分には解明できていない(実際の効果は、状態によって大きく異なった可能性があり、その点も依然不明のままだ)。
ここ数年、レムノス土に関する既存のエビデンスが再検討されてきた。この粘土の潜在的な治癒特性は粘土そのものに由来するのではなく、粘土と特定の真菌との相互作用であった可能性という仮説が立てられた。
オンラインジャーナル「PLOS One」で発表された最新研究によると、真菌は粘土に偶然、あるいは意図的に、さまざまな時期に異なる方法で添加された可能性があり、この仮説を検証するために真菌を培養し、2種類の異なる粘土と組み合わせた。
粘土は古代のレムノス土のサンプルと鉱物組成が類似しており、真菌はペニシリウム・パープロゲナム(Penicillium purpurogenum)で、古代のレムノス土のサンプルで特定された属(「種」のグループ)の1つであった。
この実験では特定の生物活性化合物が生成され、その後、マウスに与えられて腸内細菌叢(マウスの腸内微生物群)への影響を調べ、ヒトに関連する生物学的プロセスを分析した。
その結果、特定の有益な真菌と粘土を組み合わせることで、抗菌特性を持つ化合物が生成され、さらにマウスの腸内細菌叢(腸内フローラ)によい影響を与えていることが示された。
ヒトにおいては、健康な腸内細菌叢(腸内フローラ)は腸の健康だけでなく、免疫、代謝、さらにはメンタルの健康にも影響を与えることがわかっている。したがって、レムノス土の治療効果は、腸内細菌叢(腸内フローラ)を調整する潜在力に基づいていた可能性がある。
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