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トランプの「領土奪取」は暴論にあらず。グリーンランドとパナマ運河はなぜ放置できないのか

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月15日 18時19分

息子ドナルド・トランプ・Jr.がグリーンランドを訪問 EMIL STACHーRITZAU SCANPIXーREUTERS

練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)
<グリーンランドとパナマ運河の獲得を突然ぶち上げたトランプ2期目の外交の特徴はアメリカ一極主義と帝国主義>

アメリカの「国家安全保障」と「自由世界」のために、グリーンランドとパナマ運河を獲得するなら、軍事行動や経済的措置の選択肢も排除しない──。ホワイトハウスへの復帰を約2週間後に控えたドナルド・トランプ次期米大統領が、そう記者団に語ったのは1月7日のこと。たちまち世界中から非難の嵐が巻き起こったのは驚きではない。

もちろん、武力によって外国の領土を奪うことをほのめかすなど言語道断だが、このときトランプが指摘した懸念の多くは正当なものであり、むしろ歴代大統領が取り組んでこなかったことが不思議なほどだ。

地球温暖化により北極圏航路の現実味が増すにつれ、ロシアと中国の船舶(軍用船を含む)が北極圏を経由して、ヨーロッパとアジアを行き来するケースは増えている。

中国はさらに、グリーンランドに3つの空港を新設または整備することをもくろみ、2019年に米国防総省に阻止されていたことも明らかになった。それでもレアアース(希土類)を採掘するための、中国の積極的な投資は続いている。

パナマ運河「奪還」の意欲とともに2期目のトランプ政権は内向きではなく拡張主義に転換する可能性がある AP/AFLO

カーター政権の大きな間違い

グリーンランドはデンマークの自治領で、防衛はデンマーク軍の統合北極圏司令部に頼っている。その構成は兵士130人、犬ぞりチーム6つ、航空機1機、ヘリコプター2機、哨戒艇7隻という簡素なもの(フリゲート艦1隻が加わることもある)。日本の6倍の面積を持ち、赤道の長さにも匹敵する複雑な海岸線を持つ島と周辺海域を守るには、ばかばかしいほど不十分だ。

パナマ運河は、アメリカにとって直接的な重要性がはるかに高い。なにしろアメリカ発着の貨物船の40%が利用するほか、大西洋と太平洋の間で「配置換え」をする米海軍艇のほぼ100%が通過するのだ。

20世紀初めにアメリカの資本で建設されたパナマ運河は、長らくアメリカの管理下にあり、両岸にはいくつもの軍事施設が建設された。ところが1977年、良心的なジミー・カーター大統領が米議会の反対を押し切り、わずか1ドルの対価でパナマ政府に運河の主権を返還した。

だが今は、中国がアメリカに次ぐ運河の利用国となっている。それを反映して、パナマ政府は2017年、それまで承認していた台湾との外交関係を断絶して、中国との国交を樹立した。現在、香港の海運最大手ハチソン・ワンポアが、運河のカリブ海側玄関と太平洋側玄関に位置する港の独占的管理権を保有する。カーターの措置に反対した面々には、先見の明があったのだ。

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