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アサド政権崩壊で、もうシリア難民に保護は不要?...強制送還を求める声に各国政府の反応は?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月15日 14時17分

キリスト教民主同盟(CDU)のイェンス・シュパーン議員は、自主的に帰国するシリア難民に政府が1000ユーロを支給する計画を提案。さらにキリスト教社会同盟(CSU)のアレクサンダー・ドブリント議員は帰国を保証する代わりに、シリア再建へ財政支援を行うべきだと表明した。

相次ぐ政治家の発言に、ドイツ在住シリア人の間には動揺が広がっている。シリア難民は、市民の役割を果たすことでドイツ社会にかなり溶け込んでいるとみられる。

約22万6600人が就職して社会保険料を納め、約27万9600人が求職者として登録されているなど、他の難民グループより社会に貢献する資質があると考えられている。

ダマスカスを掌握して軍事パレードを行う暫定政権のメンバー(昨年12月) AP/AFLO

昨年12月、ドイツ中部のワイマールにあるシリア料理店に、3人のシリア難民がいた。ユスフとモハメド、そしてイッサは口々に、祖国には戻りたいが、一時的に訪問して状況を確認したいだけで再定住するつもりはないと話した。

学生のイッサはシリア東部デリゾールの出身。故郷は今、アメリカが支援するクルド人主体のシリア民主軍(SDF)が実効支配している。彼はトルコが支援するシリア反体制派との緊張状態を懸念し、「まだ安全ではない」とドイツ語で語った。ドイツ北部のメクレンブルクで理容師をしているモハメドは、今後もドイツで暮らしたいと話した。

人権活動家のみるところ、ドイツ在住のシリア人は生活を立て直すために多大な投資を行っているので、いきなり全てを放り出すのは難しい。

ドイツの難民支援団体プロ・アジールで活動する社会学者のカール・コップは、欧州にいるシリア人の大半、特に仕事と収入があって子供を学校に通わせているシリア人はこのままとどまるだろうと言う。「高齢の人たちは祖国に帰って余生を過ごしたいと思うかもしれないが」

高齢化が進む欧州の労働市場の穴を埋めるためにシリア難民が重宝されている今、社会に溶け込んだシリア人を「引き剝がすのは愚かだ」と、コップは言う。ドイツでは介護業界だけでも、20万人近くを確保する必要がある。

強制送還は条約違反

さらに人権活動家らは、保護されるべき資格を持つ人々を国外退去処分にすれば、さまざまな問題が生じると主張する。その人々には、国や地域の法律や国際法に由来する保護が重なり合うように提供されているからだ。

彼らを強制送還すればいかなる形でも、1951年の難民条約の「ノン・ルフルーマン原則」(難民を迫害の危険に直面する国へ送還してはならないという原則)に違反する。難民の資格は満たさないが、母国に戻れば迫害を受ける恐れのある「補完的保護」の対象者も、EUの人権憲章で保護されている。

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